番外編
「NEW−SELECT」 「PW」 「M3」 「INTER FILM」 「彩プロ」
私のようなB級映画好きならば誰もが知っているこの名前。そう、これらは現在日本で活発に活動しているB級映画配給会社である。こういった会社は東宝や東映、松竹などの大手映画会社が決して輸入しないような「ヒット作の便乗モノ」や海外のエログロ映画を輸入し、それを大手ビデオショップに配給しているのだ。果たしてこんな事をして儲かるのか?とも思えるのだが、ビデオブームが去り「ミミビデオ」を筆頭とした多くの配給会社が業界から撤退した中でこれらの会社が未だ生き残っているのを見ると、どうやらそれなりに儲かっているらしい。
そしてこの業界で大きな地位を占めているのがあのアルバトロス・フィルムである。最近こそ「アメリ」を配給したことで一般の映画ファンにも認知されつつあるが、この会社の配給するジャンルは大概がエログロか海外のテレビ映画だ。また、「八仙飯店之人肉饅頭」シリーズを配給して「人肉ブーム」の火付け役となったのもこの会社だし、他にも単館上映で「キラー・コンドーム」を上映して一部の話題をさらっていたりと、いわゆる「話題のB級映画」を配給しているのが、この会社の大きなカラーと言えよう。
もう1つ、この会社の最も凄いところは宣伝の巧みさである。キラー・コンドーム上映時には宣伝グッズとしてコンドームを配ったり、日本最大級のB級映画の祭典「東京ファンタスティック映画祭」に何かと顔を出したりと、とにかくその宣伝熱には物凄いものが感じられる。
そして2001年夏、この会社のそういったカラーが最大限に発揮される時が来た!そう、「クイーン・コング」の全世界先行上映である。その際にアルバトロス・フィルムは渋谷でクイーン・コング祭りを開催して大々的な宣伝を行った他、超豪華メンバーによる日本語吹き替えもした(吹き替えについては「アタック・ザ・マミー」の項を参照)。「クイーン・コング」は初公開時、まだパロディというジャンルすら確立していなかったため、キングコングの製作会社にパクリだと訴えられた。裁判は結局「クイーン・コング」側の勝利に終わったが、裁判沙汰になった映画を上映しようとする映画館も無く、そのまま長年忘れ去られていたという幻の映画である。そのフィルムをアルバトロスの社員が偶然発見し、今回の上映に至ったのだからそこいらの「幻の映画」とは重みが違う(つまり、あの誇大広告に聞こえる予告編ナレーションは全て真実なのだ)。
しかし私の住んでいる地方ではクイーン・コングの上映が行われなかった。そこで私は大いに落胆したのだが、なんとプレミア上映だというのに今回ビデオ・DVD化されたのである!そこで私は驚喜し、リリース日の2月8日は即ビデオ店に走り、半年の時を越えて念願のクイーン・コング(もちろん日本語吹き替え版)を観るに至ったのだ。
・・では、さっそく内容紹介といってみよう!
主人公のレイ・フェイ(これはキングコングのヒロイン「フェイ・レイ」の名前をもじったもの)はマリファナ中毒の小悪党。今日も彼はキングコングのレアなポスターを万引きし、雑貨屋の店長に追い回されていた(ポスターをまんま出したのはオリジナルに対する敬意だろうか)。ところがそんな彼を見ていた一人の女性がいたのだ。彼女は映画監督であり、今度の映画に出演する男優を探していたところ、偶然見かけたレイを適任と見なして彼を密かに追いかけていたのである。彼女の助けもあってレイは雑貨屋から逃れられたものの、レイは彼女の睡眠薬によって眠らされ、強引に映画撮影のツアー隊に加えられてしまったのだ(このあたり、必死にフェイを説得していたオリジナルに喧嘩をうっている)。初めは女性しかスタッフがいなかったので嫌々ツアーに参加していたレイであったが、映画が成功すれば大スターになれるという話を聞いて心機一転、映画の台詞を覚えようと努力を始めたのである。そしてツアー隊の乗る船の行く先は「コンガを踊る国」。途中、レディ・ジョーズ(恐ろしくチャチな造形)の襲撃があったりしながらもツアー隊はなんとか「コンガを踊る国」に到着した。ところがその国で待っていたのは、トイレ洗剤のCMをする原住民やターザン一家、そして脅威の巨大猿クイーン・コングであった!その後、原作のような展開(おもいっきり馬鹿な演出がなされているが)でレイが原住民(もちろん女ばっかり)に捕えられてクイーン・コングの生贄(巨大ケーキの中に突っ込まされている)として捧げられ、クイーン・コングの登場となるのだが、そのクイーン・コングがほとんど「モンチッチ」そのものな造形で、とてもじゃないがゴリラに見えない(まあ、キングコングもゴリラとは言い難い造形だったからどっちもどっちなのだが)。そんなコングにレイはさらわれて、コングともどもジャングルの奥へと去っていってしまった。もちろん「主役がいなければ映画にならない!」というわけで、ツアー隊もコングを必死に追いかける。だがジャングル奥地では人食い植物(「緊急指令10−4・10−10」第一話に出てきたもののようにペラペラなのは言うまでもない)や古生代のバグパイプ(すっかり化石になっている)がウヨウヨしており、それらに阻まれてツアー隊はコングをすっかり見失ってしまったのである。その間、コングはオリジナルに倣ってティラノザウルス(アイロンがけされていないシャツのようなしわしわな造形なのは言うまでもない。しかも手元がおぼついていない)やプテラノドン(「どこがプテラノドンだよ!」とツッコミたくなるような造形)と戦い、その様子を見ていたレイは、真剣に自分を愛してくれるクイーン・コングに心を開きかけていたのであった。ところがそこにツアー隊が到着。はめ込み合成と人形で展開されるレイ救出劇の後、映画監督はオリジナル同様にコングを捕えてロンドンへと連れ帰ってしまったのだ(本作は英・伊合作のため、ニューヨークではなくロンドンである)。
そして数週間後、ロンドンの広場にて女王陛下の御前のもと(出ました、イギリスお得意の王室パロディ!)、クイーン・コングのお披露目が行われた(ちなみにコングの前座は「猿の惑星バンド」。つまり猿つながりというわけだ)。ところが映画監督がこれ見よがしにレイに絡んでいたため、彼女に嫉妬したコングは鎖をひきちぎって大暴れを始めたのである。怪獣映画の定番通り、ロンドンの名所や石油基地を破壊して回るクイーン・コング。すぐにコングは監督に連れ去られたレイを発見し、彼を救出したのである。この時、すでにレイとコングは相思相愛となっていたのだ!そしてレイを握り締めたコングは、エンパイヤ・ステートビルの代わりにビッグ・ベンに登った。ところがそんな彼女に空軍が迫る!果たしてクイーン・コングはキングコング同様に撃ち殺されてしまうのか!?
(以下、ネタバレ)ところが女性ばかりのツアー隊の中で過ごし、完全なるフェミニストとなっていたレイがテレビカメラ(どこにそんなものがあるんだ!?)の前で「クイーンは僕を本気で愛してくれる、まさに女性の鑑だ!女性の皆さん、こんな全女性の見本というべきゴリラをこのまま見殺しにしてしまうのですか!?」と演説したのである。その演説に心を動かされたロンドン中の男性に虐げられていた女性達はコングを救えとデモ行動を起こし、そのおかげでコングは殺されずに済み、クイーン・コングはめでたくアフリカに還されることとなったのであった。めでたしめでたし。
という内容の本作だが、やはり「アタック・ザ・マミー」同様に吹き替えのやる気の無い雰囲気が本作の怪しいムードを倍増させており、単なるパロディ映画の元祖に終わらせてないところが凄い。さすがはアルバトロス、だてに業界で大きな地位を占めてはいない。特別な作品を最高の形で提供する。そんな事を本気でしてくれるあたり、ここは配給会社の鑑だと私は思うのである。
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