アムステルダムで起こった凄惨な事件。一家4人と娘の彼氏が無惨に引き裂かれた遺体となって発見された。その後も同様に引き裂かれた死体が相次いで発見され、街は大混乱に陥った。警察が獣医のリジーに意見を仰いだところ、なんとライオンの仕業ではないかとのこと。どこかの金持ちが連れ込んだが逃げ出したのか、はたまた野性のライオンが市街地に紛れ込んでいたのか。原因は明らかではないが、人間の味を覚えたライオンは街のどこかに潜んで獲物を虎視眈々と狙っている。このままでは更なる被害の拡大が予測された。直ちに市長はいとこのハンターを呼び寄せてライオン狩りを依頼したものの、敢え無く返り討ち。特殊部隊を投入しても歯が立たず、混乱の果てに同士討ちをしてしまう体たらく。もはや最後の頼みの綱はリジーの元彼で野生動物の専門家のジャックのみだが、彼は昔ライオンに片足を喰われて電動車椅子生活。それでも彼は卓越した知識と銃火器、そして高速で走れる車椅子を以てライオン狩りに身を投じた…。
ライオンが人間を狩り、人間がライオンを狩るハンティング勝負が展開するアニマル・パニック映画。本作のライオンはなかなかに狡猾な奴で、森の中やトンネルの物陰にひっそりと身を潜めて確実に狩れる獲物を正確無比にハントする。日常風景に突如人喰いライオンが現れるだけでも恐ろしいのに、女子供老人にも一切容赦せずパニック映画の常識が通じないものだから神出鬼没の厄介さが一段と際立っていた。肉体損壊描写がかなりグロテスクなのもポイント高いし、夜の街でバイクを執拗に追いかける「猛獣大脱走」のチーターチェイスを彷彿させる場面があるのも嬉しいところ。
そしてライオンがライオンなら、人間側もなかなかに魅力的。ジャックはキャタピラ付きの車椅子で森を駆け回ってライオンを追い詰めていき、ハンディキャップを物ともしない姿は格好いい。ライオンとの最終決戦もヒネリの利いたクライマックスから豪快な退治方法まで見応え抜群な、アニマルパニック映画の佳作と呼べる出来だった。