ボストンの高周波攪乱研究所。ここではウィットロー博士が国防長官ブライアンの指示のもと、最新鋭の地球防衛システムを開発した。地上から太陽に高周波ビームを放ち、太陽から放出されたエネルギーを衛星兵器が取り込むことで、ミサイルも隕石も即座に破壊する仕組みだ。大統領の目の前で行われた完成披露のテストの結果も上々。今後アメリカに更なる発展と栄光をもたらしてくれるはずだった。しかしその直後、衛星兵器に隕石群が襲来。破損した兵器は暴走し、あろうことか太陽を攻撃してしまった。すると太陽に巨大黒点が発生し、史上最大規模の太陽風が北半球を襲来。大地は揺れ、飛行機は墜落。送電網や通信機器も壊滅的な被害を蒙る大惨事に陥った。更に1万以上の人工衛星が機能を停止して地球に降り注いでロンドンは壊滅。更に更に大量のコロナガスが太陽より放出され、3時間後には地球に到達してオゾン層が破壊。致死量の紫外線が降り注ぎ、地表に暮らす人類が絶滅することが判明した。国家に栄光をもたらすはずの兵器が、人類に絶滅の危機をもたらしてしまったのだ。そうと知った政府は太陽物理学者のマイケルに協力を要請。マイケルは高周波ビームの設定を変えて地球全体を帯電させ、コロナガスを跳ね除ける作戦を立てた。人類絶滅の瞬間が刻一刻と迫る中、高周波攪乱研究所で突貫工事の作業が行われ、ビームが放出された。すると目論見は見事にはまり、コロナガスは地球から遠ざかって人類は滅亡を免れた。これで万々歳と思いきや、そうは問屋が卸さない。地球の磁場に乱れが生じ、アメリカ全土の上空にオーロラが出現。なんと地球全体が帯電した影響で地核の回転が止まってしまったのだ。地球全土で地震が多発し火山が噴火。気温も急上昇し、7〜8日後には全人類が滅亡することが判明した。地中に核ミサイルを撃ち込む作戦も失敗し、やっぱり頼みの綱はマイケルだけ。なのに国防長官ブライアンは自身の面子を優先し、マイケルを政府施設を破壊した罪でペンタゴン地下に監禁したばかりか、ウィットロー博士をも追放。自分が立てた「地中に中性子爆弾を撃ち込む作戦」をゴリ押しで認めさせようとした。ウィットロー博士の協力で無事ペンタゴンから逃げ出したマイケルは、国防総省の追撃を振り切って事態の打開案を立てた。それは巨大な地割れに高周波ビームを撃ち込み、地核を動かすというものだった…。
無数の人工衛星が降り注ぐ場面があるから「アルマゲドン」と邦題が付けられたカナダ産のTVムービー。人工衛星の墜落は作中で描かれる災害のほんの一部に過ぎず、地震に地割れに火山噴火に電波障害、飛行機や自動車の機能停止に気温の急上昇と、多種多様な災害が発生して人類滅亡の危機が次から次から押し寄せる盛り沢山な作りとなっていた。しかし災害描写に関しては本作、あまり楽しむことはできない。ほとんどの災害はろくに映像で見せてくれず、無数の人工衛星がロンドンを壊滅させる場面は遠くからの風景を見せるだけだし、火山噴火に至っては会議で「世界各地で多発している」と報告されるのみ。一番力が入っているのは後々ビームを撃ち込むことになる地割れが発生する場面で、大地が陥没していく様を上空から捉えた映像はなかなかの迫力だが、どうにも地味な印象は拭えなかった。その上この映画、後半になると国防長官の暴走による人間同士のいざこざがメインになり、災害で人類が阿鼻叫喚に陥る様が見たい身としては大いにゲンナリさせられた。
そんな本作の見所は、主人公マイケルが置かれる過酷な状況だ。そもそも政府の責任で災害が発生したのに、政府は面子が大事でなかなか事態を公表せず、解決できる能力を持つマイケルに仕事が回ってこない。なのでマイケルが対応策に乗り出すのはいつも人類滅亡の期限ギリギリで、まるで無茶振りされる下請のような悲愴な姿に涙を禁じ得なかった。