アンツ・パニック 巨大蟻襲来             「評価 B」

ニューメキシコの砂漠地帯。バイク乗りの青年ルーカスと相棒の整備士ブライアンは、レースの祝勝パーティーを開いていた。会場にはブライアンが密かに思いを寄せているリサも呼び、ルーカスは2人をくっつけようと画策。でも奥手なブライアンはなかなか行動を起こさない。それどころかパーティー会場を離れ、1人で岩場に行って黄昏る始末だ。心配したルーカスが様子を見に行くと、ふと崖の下に洞窟を発見。冒険心が芽生えたルーカス。ブライアンを強引に引っ張り出し、洞窟の中へと入っていった。洞窟は岩場の反対側に抜けており、その先には軍需企業の研究施設が。研究施設に人間の気配は無く、明らかに今は使われていない様子だ。そこで不安になるブライアンを余所に施設に侵入。奥へ奥へと進んでいくと、彼らは恐るべき光景を目の当たりにする。人間と同じぐらいに巨大化した蟻が、人間の死体を食い散らかしているではないか。実はこの施設、隕石に付着していたエイリアンの遺伝子と蟻を掛け合わせ、凶悪な巨大蟻を生み出す研究がされていたのだ。巨大蟻に襲われてパニックに陥る2人だったが、心配して駆けつけたリサのおかげで何とか施設を脱出。しかし巨大蟻たちは繁殖のためにエタノールを欲しており、酒の匂いを嗅ぎつけてパーティー会場を急襲してきた…。

往年のビデオゲーム「It Came from the Desert」を実写化した巨大蟻映画。巨大蟻から逃げまくり殺しまくるゲームが原作なのでさぞや景気のいい巨大蟻虐殺アクションが見られるのかと思いきや、ビールとバイクとイイ女に全てを捧げるボンクラ青年たちが命の危機に瀕してもマイペースにコントを繰り広げるダウナー系映画で驚いた。本作では見事なまでに爽快感や緊迫感というものが排除されており、巨大蟻の目の前でコントをしてもなかなか襲われないし、たとえ襲われたとしても何だかんだで生き残ってしまう率が高くて、人間が殺される光景はろくに拝めない。巨大蟻に反撃する段に入っても、軍需企業の秘密兵器である強力な銃が手に入ものの、こいつがすぐに弾切れを起こしたり全然命令を聞かなかったりで使い勝手が悪いことこの上なしという有様だ。一方の巨大蟻たちも負けず劣らずのすっとぼけ加減で、デザインは尋常でないぐらいに格好いいのに、仲間とアリ語で会話したり、ビール飲んでゲップしてりとユーモラスな姿が殊更に強調されていた。総じてパニック映画として期待されるものは全くと言っていいほど拝めないものの、長閑な雰囲気で統一された世界は妙に心地よいものがあって嫌いになれない作品だ。


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