ファイブヘッド・ジョーズ            「評価 C」

プエルトリコのパロミノス島。美しいカリブのリゾートを血に染めた驚異的事件は、近くの海に浮かんでいた1台のクルーザーから始まった。カメラマンがビキニギャルたちの撮影に勤しんでいると、海上に露出したサメの背ビレを発見。普通なら恐れるところだが、ビキニギャルの撮影でテンションが上がっていたためか、はたまたアサイラムのサメ映画の観すぎでサメに対する恐怖が消え失せていたためか、カメラマンは全く物怖じすることなくサメにカメラを向ける。しかし次の瞬間、突如海中からサメが飛びかかってきた。それも只のサメではない。4つの頭を有する異形のサメ、フォーヘッド・ジョーズだ!奴は横に並んだ4つの口でカメラマンやビキニギャルたちを同時に喰らい、海中に姿を消した。やがてサメの出現情報を聞いてスターリング警部たちが駆けつけると、無人のクルーザーを発見。現場はカメラが残されており、中には4つの頭のサメの画像が。只事ではないことを確信した警察は、水族館で海洋生物の研究をしているヨー博士に画像を見せて相談を持ちかける。するとヨー博士は「合成画像に違いない」と一笑に付し、警察を追い返した。しかしその実、彼女はこのサメが実在すると確信していた。そしてこの珍しいサメを生け捕りにして水族館の目玉にしようと考えていたのだ。ところがこんな化け物の捕獲がそう易々とできるはずもなく作戦は難航。その間にも被害は拡大し、多くの人間やザトウクジラが餌食に。そしてたくさんご飯を食べたことで、フォーヘッド・ジョーズの肉体に異変が。尾鰭が新しい頭に変わり、前後とも隙が無い完璧なサメ、ファイブヘッド・ジョーズへと進化を遂げたのだ…。

「トリプルヘッド・ジョーズ」の続編だから首が更に増えて4つに!しかも中盤以降は更に増えて5つに!というあまりにも分かり易い進化を遂げてしまった第三弾。やっぱりストーリーは前作&前々作と同様に有って無きが如し。カメラマンやダイバーやクジラが次々と出て来ては機械的に処理されていく様は最早笑うしかなく、金儲け目当てでサメを追っていた人間が改心する展開の雑さもたまらない。前作の白眉となっていたサメ掃討作戦についても、今作では「イルカの声で誘導して爆破する」という「メガ・シャークvsグレート・タイタン」を彷彿とさせるもので目新しさは薄い。
しかし今作のサメ、ただ首の数が増えただけではなかった。獲物を奪い合って喧嘩ばかりしていた「トリプルヘッド・ジョーズ」兄弟とは対照的に、とても兄弟仲が良好なのだ。獲物を1つの頭が独占することなく、いつも隣の頭と半分こにして捕食する。中盤以降尾鰭に弟が誕生しても、ちゃんと獲物を渡すことを忘れない。「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」という相田みつをの言葉を実践しているかのような麗しい兄弟愛にとても心が温かくなった。また冒頭から揃っていた4つの頭が等しく精悍な顔つきをしているのに対し、中盤以降誕生する弟はずっと口を開けたままのアホ面をしているのもチャーミング。あまりに可愛らしいものだから、人間たちに蜂の巣にされる終盤は涙なくしては見られない。主役のキャラクター性を強化したことにより、シリーズに新しい魅力を吹き込んだ作品だ。


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