穏やかな田舎の空を飛ぶ一匹の蜜蜂。とその背後から遥かに大きい黒い蜂が接近。哀れ蜜蜂は組み伏せられ刺し殺され儚い生涯を閉じた。そんなことは露知らず、近くの道を走る一台の車。ケータリング会社を立ち上げたジュリアが従業員のポールと共に、仕事先へと向かっていた。人里離れた地に、巨大な邸宅。ここには今は亡き製薬会社社長の家族が暮らしており、ジュリアたちは追悼パーティーの手配を依頼されていたのだ。パーティーには多くの紳士淑女がやってきたものの、ジュリアの真面目な働きぶりとポールの調子のよいトークで滞りなく進行し、無事仕事を終えられるはずだった。ところがそれを突き崩す、とんだ闖入者が現れた。成長ホルモン入り肥料により突然変異した巨大な蜂。そいつが邸宅の庭から大量に出現し、パーティー客に襲いかかってきたのである。奴らは鋭い針で刺すのみならず卵も産み付けるものだから、刺された人間の体内からは一段と巨大な個体が出現。たちまちパーティー会場は人喰い蜂で大盛況を見せ、ジュリアたちはたまらず屋敷の中に避難した。携帯電話の電波も届かなければ、固定電話も繋がらない。陸の孤島でジュリアたちは生還する術を探るが、避難した人間の中にも蜂に刺されていた人間がおり、続々と巨大蜂が発生していった…。
「ぎゃあああああ痛ってええええええ!」というDVDジャケットの身も蓋もない惹句が衝撃的な蜂映画。巨大な蜂の針が人間を貫いているこれまた身も蓋もないデザインと相俟って、まるで名作らしさを匂わせない佇まいではあるが、これがなかなかどうしてエグい描写がてんこ盛りの大変素晴らしい快作だった。とにかくこの映画、人間が割れまくる。蜂に刺された人間の口から目から肩から巨大蜂の足や針が飛び出してきて、そのまま人間をバリバリ破壊する凄まじい絵面が次から次から飛び出してくるのだ。このえぐさだけでも大変感動的なのに、人間の肩から巨大蜂が顔だけ出して「Mr.オセロマン」状態になって笑いも誘ってくれるからたまらない。そしてこの映画、巨大蜂自身の魅力も見逃せない。長い脚が特徴的なシャープなフォルムをしており、飛んでも這っても様になる。脅威的なしぶとさから窺える虫けら根性も重なり、数ある蜂映画の中でも屈指の格好よさに惚れ惚れさせられた。