エイブリーは4年ぶりに故郷の田舎町に帰ってきた。父ルシアンは沼地でのワニ狩猟を生業にしており、娘が来るや否や意気揚々と狩りに出発。まだ狩猟解禁前にもかかわらず一匹のワニを水揚げした。ところがこのワニ、いつも狩ってきた奴とは明らかに違う容貌をしていた。首の周りは赤く、尻尾には鋭いトゲが生えていたのだ。どうやらこのワニ、隣のロビショー家が失敗した密造酒を沼に垂れ流したことで、化学添加物の影響を受けて突然変異したものらしい。やがて町にはワニの被害が続発。エイブリーは幼馴染の青年デイサンと共に新種のワニの胎児に乗り出すが、そんな中ルシアンたち家族の人間が忽然と姿を消す。果たして彼らはワニに食べられてしまったのか。動揺しながらもワニ退治を続けるエイブリーは、底なし沼にはまって出られなくなってしまう。とそこへ一匹のワニが出現。最早万事休すかと思った時、ワニは意外な行動に出た…。
「スパイダー・シティ」のグリフ・ファースト監督によるワニ映画。「新アリゲーター」なんて邦題だが、都会から離れた田舎町で廃液によってワニが突然変異するストーリーは「アリゲーター」というよりむしろ「キラー・クロコダイル」に近い感じだ。ワニは先述の通り尻尾にトゲが生えており、このトゲで人間を突き刺し持ち上げて身動きを封じてから食らう他、トゲを飛ばして攻撃することも可能。更にある手段で増殖する妙技を有しており、これが「田舎街を嫌って故郷を捨てた娘の葛藤」という本筋のドラマと見事に融合。悲惨な闘いの果てのラストシーンは哀しくも味わい深いものがあった。
しかし本作、中盤の中弛み感が凄まじかった。「廃液によりワニが突然変異」なんて冒頭で示唆されていることがいつまでも登場人物に明かされずやきもきさせられるし、ワニとの闘いも小型をチマチマ倒していく展開がダラダラ続いて単調気味。これらの裏にワニの増殖方法の真相が隠されているわけだが、もう少しワニとの闘いを面白く見せてくれたら言うことなしなのに勿体なく感じられた。