メガ・スパイダー        「評価 B」

害虫駆除業者のアレックス・マシス。仕事先で毒クモに噛まれた彼は近所の病院へ。軽く治療を済ませてもらったところ、遺体安置室に人間の頭ほどの大きさの蜘蛛が出現したという話が耳に入ってきた。早速ビジネスチャンスと思ったアレックスは、院長に直談判。警備員ホセと共に蜘蛛の捜索を開始することにした。安置室を見ると、既に蜘蛛の姿は無い。通気口の中には、人間さえも絡め取る凄まじい粘着力の蜘蛛の巣が張り巡らされていた。これは只事ではない、と未知の強敵に対して気持ちを引き締めるアレックス。しかしそのころ、病院にタナー少佐率いる陸軍特殊部隊がやってきた。どうやらこの蜘蛛、軍の研究の副産物として生み出されたもので、人間を喰らいどこまでも巨大に成長する凶悪な奴らしい。そうこうしている間に蜘蛛は患者を食い殺し、下水道へと逃走。「あとは軍が何とかする」と言われたアレックスは一旦は引き揚げようとしたものの、「最高級の駆除業者になれるチャンスだ!」とホセにせっつかれて、自らも巨大蜘蛛を追うことにした…。

マイク・メンデス監督が傑作「ラバランチュラ 全員出動!」の前に撮ったクモ映画。まず目を引くのがオープニングだ。破壊された市街地。茫然と佇むアレックス。逃げる群衆。燃える人間。銃撃する軍隊。出動するヘリが向かった先にはビル。ビルの上には巨大な蜘蛛。という一連の流れがスロー映像で紹介され、今後の期待を存分に高めてくれる。そこから12時間前に逆戻りして巨大蜘蛛発生までの経緯が語られることになるのだが、このような構成がとられる映画は「エイリアン・ゼロ」「巨大毒蟲の館」のように終盤までの生き残りが分かってしまったり同じ場面を繰り返し見ることで間延びしてしまいがちだ。しかしこの映画は冒頭で出てくる主要人物はアレックス1人だけだし、クライマックスで流れる同じ映像も演出をガラリと変えて絶望感な雰囲気から勇壮なムードに変えるという手の込んだ工夫がされており、全くそのような不都合が生じていなかった。これだけでも監督のセンスの良さが窺えるというもの。
そして主役のメガ・スパイダーも魅力全開。さすがに溶岩は吐かないものの毒液を噴射する能力を持っており、毒液を浴びた人間の顔が溶ける様をじっくり拝ませてくれる気の利いたサービス精神が嬉しい限り。公園に出現する際も、木の上からの巨大なシルエットでの登場に始まり、幼女の背後の地面に鋭い脚を突き立てる、ランチ中のテーブルに骨だけになった死体を放り込むなど、見せ方がいちいちアイディアに富んでいて飽きさせない。公園がパニックに陥った後も鋭利な脚で群衆をガンガン刺していく活躍が山ほど盛り込まれていて非常に満足感が高かった。
またこの映画、「ラバランチュラ」同様にコミカルな掛け合いが満載。「ラバランチュラ」のような大きな盛り上がりこそ無いものの、気楽に観られる良作だ。


TOP PAGE