ディープインセクト         「評価 A」

遠い惑星に棲息する奇怪な昆虫怪獣インセクチュラ。それがどういう原理を使ったのか、隕石に乗って地球へとやってきた!湖に墜落したインセクチュラは早速水着ギャルを襲い、無残な姿へと変えてしまう。発見された死体はFBIのケンプラー博士とミス・サックスが解剖し、地球外生命体の仕業ではないかと推測する。その間にも被害は拡大し、新たな水着ギャルや娼婦たちが哀れインセクチュラのえじきとなり殺されていく。事件を追っていた環境保護庁のデル・ビオンド捜査官は、1人の男に疑惑の目を向ける。死体を解剖したケンプラー博士だ。彼はかつて大学で教鞭をとっていたが、「地球環境保護のため人類を4分の3に減らすべきだ!」と過激な主張をして追放。以後怪しげな研究に手を染めているらしいのだ。すると不安は的中。ケンプラー博士は密かにインセクチュラの卵を孵化させ飼育しており、インセクチュラを手を組んで人類の抹殺を目論んでいた。いち早く博士の狂気に気づいたミス・サックスはデルに連絡しようとしたが、敢え無く捕縛。博士の仲間の大男ロボによって監視されることとなった。かくして邪魔者がいなくなったケンプラー博士は、インセクチュラの子どもを持って森の中に潜んでいた巨大な母体と接触を図る。ところが子どもは一瞬で潰され、博士も殺される。インセクチュラは、人間の小賢しい企みで操れるほど愚かではなかったのだ。やがてインセクチュラは都市部へと襲来。軍隊の攻撃を物ともせず、破壊の限りを尽くした…。

インパクトではなくインセクト!隕石に乗って地球を襲う昆虫怪獣という「仮面ライダーカブト」のワームみたいな出自のインセクチュラが暴れる怪獣映画だ。何より目に付くのがエド・ウッドに対する素晴らしいまでのリスペクトぶり。冒頭ではクリズウェルみたいなオッサンが「これはある種の訓話です。地球を破壊する人類への戒めなのです」と尤もらしい前説をするし、トー・ジョンソンみたいな大男と美女の絡みも搭載。そして特筆すべきは、エド・ウッド映画みたいなヘンテコ映像が如何なく引用されていることだ。たとえば放心状態のオヤジが墓場や湖を歩く場面では、画面が赤く点滅したり、湖の上に顔が浮かんだり、ぐるぐる回る映像に顔のアップが置かれたり、オヤジの放心状態を奇怪な演出で存分に語る。他にもケンプラー博士が過去を回想する場面ではピアノ演奏させながら過去を想起する形をとり、こういう作風に似合わず格好つけたがる点も実にエド・ウッドイズムに溢れていた。
しかしこの映画、単なるエド・ウッドもどきではない。それだけなら緩慢で変な演出に失笑するだけの凡作になっていたことだろう。本作は怪獣に襲われる際のグロ描写に異様なまでに拘り抜くことで、エド・ウッド映画を見事なまでに現代にアップデートしていたのだ。少年が釣りをしたら、無数のヒルが這う美女の生首が出現!生首を解剖すると中から蛆がバーン!美女の体内を触手が蠢き、口から貫通!下唇にコルク抜きをぶっ刺してピアス穴を開けようとするオヤジ!美女の顔が後ろから貫かれて口からぶっとい針がズドーン!幻覚で美女の顔がドロドロ溶解!本物の生き物と模型とCGを巧みに使い分けたショック描写は、どれをとっても正視に耐えない素晴らしい仕上がりだ。先達へのリスペクト精神と限界レベルのグロ表現が綺麗なマリアージュを遂げた本作。エド・ウッド好きには感激を禁じ得ない傑作だった。


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