天下無敵のサメ殺しフィルは、改造人間の妻エイプリル、サメから生まれた息子ギルと共に、ロンドンのMI6本部を訪れていた。新開発された対サメ兵器を見にきたのだが、その矢先にサメ退治に執念を燃やす女戦士ノヴァから連絡が入る。どうやらストーンヘンジ地下の遺跡で、シャークネードに関する新たな発見があったらしい。早速現地に赴くと、そこにはシャークネードをかたどった像と、宝石の埋め込まれた石板が。太古の時代にもシャークネードが発生していたということか。2人は驚きながら石板を手に取った──その時だった。石板が光ると同時に巨大なシャークネードが出現し、遺跡は瞬く間に崩壊。シャークネードはロンドン都市部を襲撃し破壊の限りを尽くす。エイプリルとギルは懸命にサメの大群に立ち向かったものの力及ばず。ギルは竜巻に吸い込まれ、空の彼方へと姿を消してしまった。やがて遺跡より生還したフィルとノヴァが合流し、ギルが攫われたことを知る。一度は悲嘆に暮れたが、ギルは発信機のついたヘルメットを被っていたことから、ヨーロッパ上空をシャークネードと共に移動していることが判明。3人はギルを救うため、MI6の対サメ用飛行船に乗ってシャークネードを追跡した。スイスの雪山でサメの雪崩を掻い潜り、無事シャークネードに追いついた一行。ところがいざギルを救出しようと竜巻に飛び込んだ時、突如出現した空間の断裂に飲みこまれ、遥か彼方のシドニー沖に落下してしまった。太古のエネルギーにより発生したシャークネードには、時空を捻じ曲げる神秘の力があったのだ。その後もブラジル、イタリア、日本と世界各国を巡りながら千変万化するサメ軍団と戦うフィルたち。一方そのころ、世界各地で同時多発的にシャークネードが発生。人類滅亡のカウントダウンが始まっていた…。
全米と宇宙空間を制覇したから今度は外国かあ、なんてお気楽に構えていると新機軸の嵐に仰天させられるシリーズ第5弾。まず特徴的なのが、パロディネタの多さだ。前作にもチェーンソー家族とか出てきたけれど、今回はますます尖鋭化。冒頭のイギリス編だけでもインディ・ジョーンズやらモンティ・パイソンやら007やら多彩な映画の世界がシャークネードに出会い飲みこまれていき、同じことを繰り返すシリーズに新しい風を吹き込んでくれた。
そしてシャークネードも竜巻とサメの双方においてパワーアップ。竜巻は超自然的な力で生み出されたことから、時空を捻じ曲げてフィルたちを世界各地に飛ばすという厄介かつ便利な機能を搭載。短時間で強引に世界各都市を舞台にするという荒業を成し遂げていた。そして何より素晴らしいのがサメの方の進化だ。雪崩に乗って無数のサメが押し寄せてくるサメ雪崩。海を覆い尽くさんばかりのサメが砂浜の人間を押し潰すサメ津波。サメたちが組体操して巨大な魚を構築するサメ怪獣。竜巻に飛ばされて一般人にすら簡単に殺される無力な存在という地位を確立していた本シリーズのサメが、単体での弱さはそのままでも力を合わせて脅威を開拓したという衝撃。サメたちの悲惨な姿を見守ってきた身としてはただただ感激するばかりだった。
更に本作は脚本家が交替した影響か、後半になるとこれまでの馬鹿路線とは一線を画す展開に。極端な変化に戸惑うものの、ラストはきっちり腑抜けたパロディネタでいつも通りの雰囲気で締めてくれるから安心。神話的荘厳さを帯びて拡大していく世界観に目が離せない、シリーズの更なる可能性を突き付ける傑作だ。