プライト社の社長コリンは、本社ビルで年越しパーティーに出席していた。ところが空に巨大なワームホールが出現。それを最後に記憶は途絶え、気づいた時には地下深くの居住地で、粗末なベッドで寝かされていた。周りの制止を振り切って外に出てみると、そこには異常な光景が。2つの太陽。壊滅した都市。空から降り注ぐ無数のメタン結晶。そして人間を追尾して脳神経を破壊する恐怖の霧、Eクラウド。コリンは愕然となりながらも、徐々に事態を把握していく。1年前に発生したワームホールによって、地球は銀河の彼方へと転移。メタン結晶とEクラウドによって文明は崩壊し、ごく少数の人間だけが身を寄せ合って生きていたのだ。やがて仲間たちと食糧調達に出かけることになったコリン。しかしEクラウドが発生し、逃げるうちに仲間とはぐれてしまった。荒廃した世界を彷徨う合間にも、彼の脳裏には無数の映像がフラッシュバックされる。プライト社で開発した新型の燃料電池。強大なパワーを秘めたそれが何者かに奪われ、作動直後に暴走。天に光が伸びて、ワームホールが発生する。そう、地球がこんな事態になったのはコリンが開発した燃料電池が原因だった。ところが映像に出てくる自分の姿は、単なる過去の記憶だけではない。現在の自分の考えが過去の自分に反映され、どうやら1年前の自分と無意識下で交信ができるらしい。そのことに気づいたコリンは燃料電池の開発に携わっていたジャスパー博士と出会い、燃料電池を再び作動させて地球を元に戻すべく動き出した…。
「ハルマゲドン」「アースレイジ」「2020」のニック・ライオン監督による天体パニック映画。映画冒頭、都市上空にワームホールが出現して「いったい何が起こるんだ!?」と目を輝かせたら、次の場面では1年後の荒廃した都市が出てくる。てっきり災害描写が全カットなのかと思って大きく落胆したものの、ちゃんとその後パニック描写はふんだんに出てきて良い意味で期待を裏切ってくれた。しかも本作の災害は、「アルマゲドン」が付く邦題に象徴されるメタン結晶に加えて、人間を廃人にするEクラウドの2本立て。落下して緑色の炎をあげて爆発するメタン結晶は迫力と美しさを兼ねており、Eクラウドは細長く延びて人間を追尾する動きが「ファイアー・フロム・ビロウ」を彷彿。いずれ劣らぬ魅力を放ってくれるから嬉しいこと限りなかった。
またこの映画、量子力学を話の軸に据え、過去の自分と関わりながら地球転移の真相を探り、現在の災害を止めるというSFサスペンス的なテイストに仕上がっている。これ自体はなかなかユニークだし意欲は感じるものの、いかんせん話の進め方が下手すぎた。フラッシュバックを多用しすぎてテンポを著しく削いでいるし、過去の事件も大した真相が隠されているわけではないから面白みに欠ける。上手く作れば良作になれそうなポテンシャルがあるだけに、非常にもったいなく感じられた。