2015年10月21日、オーストラリアのアデレード沖。海中を泳ぐサメをケージの中から観察させるボートが、高波に襲われて転覆。観光客たち27名がサメだらけの海に投げ出される大惨事となった。それから1か月後、海底から1つのカメラが発見された。SDカードの映像を確認すると、そこには驚くべき光景が。カメラの持ち主はカリフォルニアからやってきた若い男女3人組。彼らはリアリティ・ゲーム番組に応募するための映像を撮影しており、クレイジーさをアピールしようとオーストラリアまで足を運び、10月21日のケージ・ダイブに参加していた。サメの見学でスリルを味わっていたのも束の間。船の転覆。顔が裂けた死体。目の前で人間がサメに捕食。矢継ぎ早の惨劇に、彼らは正気を失っていった…。
ケージの中からサメを観察するアトラクションに若者たちが参加する──という導入で同年公開の「海底47m」を彷彿とさせるサメ映画。ところが船が転覆した時点で彼らはケージの外に出ており、以後ケージは画面に全く映らない。結局は海上を漂いながらサメにひたすら怯えるだけの「オープン・ウォーター」亜流作品だった。
そんな本作の特徴は、撮影形式がPOVである点、そして災害前と災害後で全く異なるストレスに晒される点だ。まず災害前は、主人公3人の極めてどうでもいい観光旅行や色恋沙汰がダラダラ続く。「ケージ・ダイブまであと3日」といったテロップが流れて興味を引こうとしているが、「オーディション用に撮影した」という設定なので素人が頑張って面白く撮ろうとしている痛々しい映像を延々と見せられるのは苦行以外の何物でもなかった。それが30分ぐらい続いて、ようやく船は転覆。顔面が裂けた死体が出てきて期待を高めてくれるものの、その直後からパッタリとサメが出てこなくなる。代わりに展開するのは、パニックに陥った登場人物たちが醜く喚いていがみ合う姿だ。サメの大暴れを期待していたのにろくに拝めないばかりか、「エイリアン:コヴェナント」並に愚かな人間たちが自滅していく様は観ていて頭が痛くなってしょうがなかった。散々おぞましい姿を見せておきながら良い話風にまとめる適当さには笑ったが、全体的には到底楽しむことのできない作品だった。