2020               「評価 D」

カリフォルニア州のサンアンドレアス断層。地震映画のメッカとも言えるぐらい頻繁に震源地として扱われるお馴染みの場所で、またしても異変が発生した。不自然な周期で微弱な揺れが観測され、大きな災害の前触れではないかと疑われたのだ。そこで大学教授のロブは、助手のジェイク、政府活動に熱心な娘ジェシーを連れて、観測所のある自然公園へと急行した。しかし異変の原因がまるで掴めぬまま被害は拡大。大地が割れ、炎が噴き出し、山火事と竜巻が自然公園を見るも無残に破壊していく。おまけにテレビでは、パリで似たような複合災害が発生して都市が壊滅しているという報が流れてきた。いったい何が起こっているというのか。慄然とする一行のもとに、別居中の妻ケイトが駆けつけてきた。イエメンで似たような災害を目撃した彼女の談によると、この異常災害は超兵器ヘルストームの仕業だという。ヘルストームは地中300メートルを掘り進む無人の地底戦車で、世界各地を周遊しながら破壊的な波動を放ち断層を破壊する恐ろしい代物。サンアンドレアス断層もパリの地下の断層も同じように破壊され、このような事態に陥っているというのだ。しかし元々ヘルストームは米軍が開発していた秘密兵器で、その情報が流出して中東の某国で開発されていた。存在が明るみに出たらアメリカの威信に関わるので、国防総省ではその存在をひた隠しにしていた。だがそうこうしているうちに、ヘルストームによる被害は拡大。中国が、ニューヨークが、次々と崩壊していく。最早人類には一刻の猶予も許されない。ケイトは国防総省で働く協力者ドリューを通じてヘルストームのデータを入手すると、ヘルストームを破壊するための作戦を打ち立てた…。

「ハルマゲドン」「アースレイジ」のニック・ライオン監督が、これまた冴えないパニック映画を世に送り出してしまった。邦題が示す通り「2012」みたいな様々な災害を総括的に扱った映画で、地震、地割れ、高圧ガス、山火事、火山噴火、竜巻──と多種多様な災害が登場。これらの災害が幾重にも折り重なって世界各地の都市を破壊していくわけだが、都市破壊は遠くから都市を撮影した映像に火柱やビルの亀裂が描き込まれただけの迫力皆無な代物。幸いVFX自体の出来はそれほど悪くは無いものの、大災害が起こっているのに地面では整然と車が走っているのには流石に面食らった。
更にこの映画、冒頭でケイトがイエメンで拉致されて救出されるシークエンスを除けば、物語の舞台は自然公園と国防総省の建物周辺だけという有様。ロブたちは自然公園から一歩も出ることなく、災害を知り、災害の広がる状況を知り、災害の原因を知り、災害に襲われ、災害のデータを収集し、災害を止めてしまうのだ。都市破壊の貧相なビジュアルと登場人物の狭い行動範囲のダブルパンチで、とても世界規模の災害を扱っているとは思えないこじんまりとした作品になっていた。


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