湖に隣接する動物園、アドベンチャー・コーヴ。トラやライオンや猛禽類など多くの動物が飼育されているこの場所で、とある事件が発生した。クロコダイルのステラちゃんが突然凶暴化し、檻を破って人間に襲いかかったのだ。早速飼育員のダフィは生物学者のジェーンと共に駆けつけ、麻酔銃でステラちゃんを眠らせた。これにて一件落着──と簡単にはいかないのがワニ映画の常。軍が極秘で開発した、あらゆる生物を殺戮ロボに改造するナノマシン。それを搭載したロケットが事故で動物園に落下し、漏れ出たナノマシンがステラちゃんの体内に入り込んでいたのだ。既に体内の殆どがロボ化していたステラちゃんは、程なくして再起動。回収に駆けつけた軍隊をも返り討ちにして、動物園を、釣り場を、バギー場を、プールを、次々と血の海に変えていった。ダフィは湖の平和を守るため、そしてプールに遊びに来ていた息子たちを助けるため、軍隊と協力してステラちゃんの討伐に乗り出した…。
パニック映画の定番生物が未知の物体を取り込んで体内からロボ化──というプロットでは「ロボシャークvsネイビーシールズ」を2年も先取りしていたロボワニ映画。でも一瞬で身も心もロボ化したロボシャークとは違い、今作のステラちゃんは変化が極めてゆっくりなのが特徴。初めは普通のクロコダイルの外見だったのが、金属の皮膚が形成されてワニ皮が剥げていき、メカメカしい姿に変貌する。その過程が中盤までじっくり使って描かれており、最終的にどんな姿になるのかという楽しみを与えてくれた。そして満を持して登場する完全体がなかなか格好良いのも嬉しいところだ。
ただ外見に反して、ロボらしい攻撃手段は皆無。獲物を追うルート検索とか妨害電波を放出するとかの小技には長けているものの、肝心の襲撃が普通のワニと変わらないのは残念だった。またTVムービー故に、残虐描写は物足りないの一言。ステラちゃんが人間に襲い掛かる場面は、引きずられる人間が写るだけだったり、赤く染まる水が写るだけだったり、かなりぼかした感じだ。ライオンの背後にステラちゃんが出現して「動物園の頂上決戦か!?」と思ったら、突然場面が切り替わって対決の様子は分からずじまい。芋洗いなプールにステラちゃんが現れた時も、今度こそ勇姿が拝めるとと思ったらすぐに場面が切り替わり、五体満足な死体が至る所に転がっている光景が映し出されるだけという有様。観ていて欲求不満が溜まってしょうがなかった。
そんなわけでワニの活躍はあまり楽しめない本作だが、主人公ダフィの知能指数の低さは見物だ。プールサイドにステラちゃんがいるのに、ウォータースライダーの上にいる息子たちに「滑り降りろ!」と命じる。自分だけ対ロボクロコの秘密兵器を持っているのに、下水道に逃げたステラちゃんを探すために軍人と別行動をとる。下水道のどこにステラちゃんがいるか分からないのに、遭遇した息子たちに「安全な場所に隠れていろ」と命じる。あまりの理解を超越した行動に頭が痛くなること必至の、凄まじい主人公だった。