韓国が世界に誇るロケットセンター。最新型ロケットで世界を飛び回り、不穏な情勢を速やかに偵察する施設だ。このたび中東で核実験が行われるとの報を受け、ロケットが現地へと赴いた。荒野で巻き起こるキノコ雲。割れた大地が凄まじい威力を物語る。その様子を上空から確認したロケットは本国に舞い戻ることにした。途中で無線が途絶えるトラブルが発生したものの、やがて復旧。ロケットは無事に帰還を果たした。だがこの核実験が、韓国に恐るべき災難を呼び寄せた。中東の核実験の余波が何故か韓国まで届き、連続して地震が発生。震源地は絶えず移動しており、どうやら地下で何かが移動しているようだ。そして遂に、奴は大地を破って姿を現した。鼻先に鋭い角を生やした巨大な2足歩行爬虫類、ヨンガリが。ヨンガリは戦車隊の攻撃を物ともせずに突き進み、やがて市街地に到達。ビル群を次々と破壊していった。軍はミサイル攻撃を検討したが、市街地を破壊するおそれがあるため及び腰。そんな中、ロケットセンターに勤務するイール博士は思わぬところからヨンガリの弱点を知る…。
大映特撮映画のスタッフの協力のもとで製作された韓国産怪獣映画。尻から血を流して痙攣するヨンガリの悲惨な最期があまりにも有名だが、その少し前の場面では少年の目の前で陽気に踊るチャーミングな姿を披露するから後味の悪さもひとしお。少年が「ヨンガリは食べ物が欲しかっただけでは」と同情を寄せても周りの大人たちの怪獣討伐を喜ぶ声に掻き消されてしまう光景はブラックな味わいに満ちていた。またその少年も運転中の人間の顔にレーザーを当てるという一歩間違えれば大事故必至なイタズラをするし、映画中盤では怪獣見たさに襲撃中の町に駆け込んで助けに来た人間を怪我させるしで好感度は極めて低い。結局ヨンガリの可哀想な姿に遣る瀬無さばかりが募る作品だった。
そんなわけで脚本は煮え切らない本作だが、先述の通りベテランスタッフが協力しているため特撮場面は見応え抜群。細かい噴射で向きを調節するロケットや、大地が割れて研究所が呑み込まれる様子、戦車隊やミサイルの攻撃など、精巧なミニチュアによる見せ場がてんこ盛り。物語上ロケットを登場させる必然性は殆どないものの、これだけの特撮が楽しめるのならば許せてしまう。他にもこの映画、荷物を持って怪獣から避難する人々や「罪人は必ず罰せられるのだ!」と十字架を振りかざす神父など、日本の怪獣映画と全く変わらない一般市民の反応も見逃せない。強いリスペクト精神に嬉しくなる快作だ。