ロスト・ジョーズ             「評価 D」

カナダのオンタリオ州の田舎町。ここには美しい湖があったものの、現在はドラゴンレディーと呼ばれる謎の人物が所有しており、複数人の警備員による厳重な封鎖がされていた。しかし入るな入るなと言われれば入りたくなるのが人の性。メイたち学生グループは最高のバカンスを過ごすべく、酔っ払いの漁師を雇って湖に侵入。中央に浮かぶ島を目指して船を走らせた。だが島に近づいた時、水面を覗いた漁師の首が消失。驚く間もなく船に何者かが体当たりして船体は大きく揺れ、メイたちは湖に投げ出された。そこに現れたのは獰猛な古代の鮫、ロスト・ジョーズだ。一方その頃、生物学者のカーリーのもとに旧知の仲であるドラゴンレディーことジャネットがやってきた。彼女曰く、島の開発で湖の底を採掘していたら地底湖を掘り当て、中に棲息していたロスト・ジョーズが現代に復活してしまった。湖に足を踏み入れた警備員たちを次々と食い殺しており、埒が明かないので退治に協力してほしいというのだ。かつてメガロドンに妹を殺されたことがあるカーリー。教え子のメイたちが湖にいると知ると、悲劇を繰り返さないために協力を承諾した。しかし飛行機に乗って島に急行すると、恐るべき事実が判明する。ロスト・ジョーズはジャネットの元部下のブラッドの手によって遺伝子操作を施され、更なる凶暴化を遂げていた。なんと水中から空高く飛び上がり、陸上の人間まで襲うようになっていたのだ…。

「これは真実に基づく物語である。被害者たちの全員遺族を尊重して仮名を用いた。加害者は公表したかったが仮名にした。というのは全てウソです」…なんてテロップで開幕早々思いっきり滑り倒してくれる空飛ぶサメ映画。かのサメ映画の醍醐味を丸ごと削ぎ落とした衝撃作「ジュラシック・シャーク」と同じ現場で撮影されており、本作も負けず劣らずの凄まじい出来栄えだった。まず何より恐ろしいのが、驚異的なスローペース進行。70分弱の上映時間でありながら、主人公がサメのいる現場に到着するのがラスト10分というサメ映画が他に存在するであろうか。それまでサメがバンバン人間を殺してくれるのかと言えばそんなことはなく、警備員が仕事をさぼって女とイチャイチャしたり、保安官たちがダラダラと世間話を繰り広げたり、酷い尺稼ぎが頻発して観る者の気力を見事なまでに奪ってくれる。カーリーの過去も既に台詞で概要は説明されているのに、何分も使ってのんびり見せられるからたまったものではない。またCGも「ジュラシック・シャーク」同様に貧相で迫力皆無。首を失くした漁師とか湖畔に散らばる肉片とか死体の造形は結構グロテスクなのに、ロスト・ジョーズが右から左に飛んでいく映像の間抜けな雰囲気で完全相殺。あまりにも呆気ない結末も脱力必至で、観終わった時には何だか優しい気持ちになれる作品だった。


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