真夏のニュージャージー沿岸はハメを外す若者たちのパラダイス。TCたちは破局したダチを慰めるため、ASS(アルコール&サン&セックス)を求めて海辺のバーに繰り出した。たちまち腹筋とノリの良さで水着ギャルたちのハートを鷲掴みにする彼ら。しかしそこに冷や水を浴びせる奴らが現れた。嫌味なインテリ大学生コンビだ。たちまち喧嘩が発生し警官が出動する騒ぎになるものの、そんな時に事件が発生。仲間の1人、JPが忽然と姿を消したのだ。警察が捜索しても一向に見つからず、やがて海に落ちて溺死したものと見做され、捜索は打ち切られた。これには流石のTCたちも意気消沈。羽毛より軽い頭を駆使してJPの行方を考えた結果、1つの結論に至った。きっとJPはサメに喰われてしまったに違いない。そこで対サメ用に大量の花火を持って沿岸の捜索を開始した。無論根拠など全くない思い付きに過ぎなかったが、瓢箪から駒。岩場に打ち上げられた釣り人の無残な死体、そして真っ白なサメの大群に遭遇した。実は海辺ではリゾート開発のため岩盤掘削が行われており、その振動に吸い寄せられるように深海からサメの群れがやってきていたのだ…。
「デビルズタイド」のジョン・シェップハード監督による、アメリカ東海岸を最大の恐怖が襲う某映画とは無関係なサメ映画。サメ映画には馬鹿な若者が付き物だが、本作は主人公たちの頭の弱さの表現が凄まじかった。冒頭の騒動でも本能に忠実な筋肉バカっぷりは如何なく表現されているのに、その後のサメとの闘いに至っても比類なきバカの勢いは収まるところを知らない。サメの好物がタンパク質と知ると「このうまさは我慢できやしない!」とプロテインバーを投げ込む。Youtubeで習った方法でボートを盗もうとして失敗する。サメを蹴飛ばすと新品の靴の汚れを気にする。サメ映画は数あれど、ここまでオツムが軽い奴らも珍しい。普通こういった連中は豪快に喰い殺されて溜飲を下げるものだが、バカなりに町を守ろうとしている様子が丁寧に描写され、きちんと愛すべきバカとなっていたのもポイントが高かった。
ただサメの方は、指を喰いちぎられて血が顔面に勢いよく噴きかかる、というゴア描写こそあるものの全体的に不発気味。ビーチやボートを襲っても大した被害を出すことができず、若者たちに簡単に退治されていく様は何とも不甲斐ない。深海に引きこもっていたおかげで若者のノリに押し負けてしまった形で、どうにも地味な印象が拭えなかった。