ピラニアシャーク           「評価 B」

暮れも押し迫ったころ。軍の研究施設ではサメをナノサイズにまで縮小させた恐るべき生物兵器、ナノザメの実験が行われていた。ところがこのナノザメ、うっかり手を近づけようものなら防護手袋と皮膚を食い破って血管内に侵入。体内を縦横無尽に泳ぎ回り食い荒らし見るも無残な死体に変えてしまう、とても手に負えない代物だった。直ちに研究は凍結され、施設は閉鎖。ナノザメの存在は闇に葬られる、かと思われた。そんな危険なブツにこそ悪い奴らが寄ってくるもの。施設関係者が資金繰りに困っているのを良いことにナノザメの権利を買い取り、少しサイズを大きくしてシーモンキーみたいに水槽で飼うペット「ピラニアシャーク」として売り出そうと考えた連中が現れた。こうして世に出たピラニアシャークはテレビCMを使った大々的な宣伝の甲斐あってクリスマス商戦の台風の目に。たちまちニューヨークの家庭の水槽と言う水槽にばらまかれた。しかし数多のシーモンキーがそうであったように、多くの家庭が買ったばかりのピラニアシャークをトイレに流して捨ててしまったから大変だ。驚異的繁殖能力で数を増やすピラニアシャークはニューヨーク中の水道を占拠。水道管の走る場所なら何処からでも現れてセレブもダンサーも配管工もみんな等しく虐殺する大惨事となった。最早事態は収拾不可能、と判断した政府は数時間後にニューヨークに核爆弾を落としてピラニアシャークの一掃を図ることを宣言。そんな折、町の害虫駆除業者がピラニアシャークの致命的な弱点を発見。核爆弾投下の時刻が迫る中で、人類の反撃が始まった…。

愛あるところに神あり、液体あるところにサメあり。というわけで人体の血管内でサメを泳がせるという荒業で冒頭から度肝を抜いてくれる極小サメ映画。低予算故にピラニアシャークの映像はチープで、大規模な災害描写はなし。環境適応能力が凄くて最終的には空まで飛んでしまうセールスポイントもあまり活きていないのは残念なところだ。
しかしこの映画、脚本がとても良かった。主人公の害虫駆除業者トリオをはじめとする社会の底辺に這いつくばるダメ人間たちが団結して家族や恋人のいるニューヨークを救ってしまうというプロットだけでも大好物なのに、彼らダメ人間の描写が秀逸。決断をアッサリ覆す。夢を抱えたまま実行しない。別れた女と1日と経たないうちによりを戻そうとする。等々、現状維持が大好きな本性が会話の端々から滲み出ていて愛おしく思えてきてしょうがなかった。また作品全体もダウナーな雰囲気ながら構成は練られていて、特に全く交わることなく進行していた2つの筋が予想だにしない方法で合流する展開には引っくり返った。オフビートな笑いは確実に人を選ぶものの、ツボに嵌れば癖になる映画だった。


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