レッドプラム島。リゾート地と呼ぶにはあまりにも寂れた場所だが、海の綺麗さだけは本物。夏になると穏やかなバカンスを過ごすのに打ってつけな穴場スポットだった。そんなレッドプラム島に、アンバーとソフィの姉妹は友人たちと共にやってきた。しかしそのころ、島では重大な事件が起こっていた。ビーチの端に佇む、政府の研究施設。そこではパーマー博士による人体組織の再生治療の研究が行われており、人間と体内構造が似ているサメを使った実験がされていた。だが被験体の1匹、ブルースが逃亡。ブルースは実験の成果によって、死んでも本能に従って動き続けるゾンビシャークと化していた。おまけにブルースに噛まれたサメや人間も感染してゾンビになり、アンバーたちが気づいたころには島は海も陸もゾンビのパラダイスと化していたのだ。嵐の接近により島から脱出することも儘ならないアンバーたちはゾンビシャークたちの襲撃を掻い潜り、やがて研究施設の警備主任マックスと行動を共にする。ワクチンの精製に必要なゾンビシャークの生首を回収し、研究施設にやってきた。パーマー博士は自らの研究を悔いながらもワクチンを完成させる。あとはブルースたちゾンビシャーク軍団を始末するだけだ。一行は電気信号でゾンビシャークを施設に集め、爆破して一掃する計画を立案し、実行に移すが…。
死んだ魚の目をしたサメ、ゾンビシャークが真夏の楽園をゾンビの楽園に変貌させるサメ映画。首だけになっても襲い掛かるサメ根性は見上げたものがあるが、ゾンビの利点が活かされるのは精々ここまで。ただでさえ映像技術の拙さ故にサメの襲撃シーンが貧相な出来なのに、多種多様な襲撃シーンなど到底望むべくもあらず。「呼吸をしないから陸上でも活動できる」という話が出てきて期待させておきながら結局陸上での動きは緩慢で大した殺戮はできないのには大いに落胆させられた。人間のゾンビもサメ退治のついでにサクッと倒される程度で存在感が極めて薄く、作品を盛り上げるには至っていなかった。ゾンビシャークとゾンビ人間に関しては、あまりにも魅力の乏しい作品だ。
ただこの映画、サメ映画としては特筆に値する点が1つある。それは悪人と呼べる人物が1人として出てこない点だ。全ての発端となる博士は、研究に没頭するきっかけから事件発生後の苦悩まで綿密に描写しているから全く嫌悪感が湧いてこない。他にも馬鹿な若者と思われた人物もきちんと自己分析をしていて聡明な一面を見せるし、軽薄と思われた人物が熱い姿を見せるし、人間の意外な一面を覗く快感が存分に味わえるのだ。そういう意味で無碍に否定するのが躊躇われる作品だった。