パリス・ランディングの湖。夏には水着の若者が集う何の変哲もない海水浴スポットだが、実はこの湖には恐るべき秘密があった。今から1年前、13人の子供を虐待死させて逃走中の極悪修道女リンダ・ブレアがこの湖で邪悪な儀式を行い、人間を襲い呪い食らう禍々しきサメ、デビルシャークを呼び出していたのだ。それから長い間デビルシャークはどういうわけか誰にも見つからないよう大人しく潜伏していたものの、最近になってようやく悪魔活動を開始。次々と若い女性を牙にかけていった。友人2人と泳ぎに来ていたアリもそんな犠牲者の一人だったが、彼女の場合は他の人間とは事情が違った。足を噛まれて生死の境をさまよっていたのが、3週間後には傷は完治。しかし何も食べず水に執着し、町をブラブラして男や女に手当たり次第に声をかける姿はまるで別人のようだった。実はデビルシャークには、呪った人間を意のままに操るという能力があった。呪いを受けたアリは悪魔の眷属となり、近づいた人間を鋭い牙で食い殺していたのだ。それを突き止めたマイケル神父は、アリを心配する親友エミリーと共に彼女を探すことにした。やがて夜の遊園地にて、男を襲っていたアリを発見。縛り上げて悪魔祓いの儀式を開始した。でもマイケル神父、悪魔祓いは初めてなものだからどうにも上手くいかない。仕方ないので最終手段として、悪魔を自分の体に乗り移らせることに。無事アリの体から悪魔は抜け出たものの、悪魔が憑りついたマイケル神父は今度はエミリーの足に噛みついた。絶叫するエミリー。するとその時、夜空が発光。星空の彼方からサメが降ってきた…。
「デビルマン」風の邦題ロゴに何とも言えない気持ちにさせてくれるオカルティックサメ映画。71分しかないものの、本筋と言える「サメの呪いに挑む神父」は精々10分程度。では他の60分近くで何が行われるかと言うと、これが湖の周りで繰り広げられるアンニュイな人間模様を延々と見せられるのだ。とにかくこの映画、出てくるモブキャラの畜生率が凄まじい。親友の彼氏を寝取る女。死体を見つけて「イイ女だ、死体でもヤれる」と最低の発言をかます男。サメのいる湖で泳ぐよう後輩に強要する女。寝そべるビキニギャルを盗撮する変態男。とにかく色々なタイプの畜生が現れ非道な行為に及ぶのを凄まじく間延びした演出でお送りするから観ている側の鬱憤は溜まって溜まってしょうがない。普通のサメ映画ならばこういった連中はサメに食われるなりして喝采を誘うものだが、この映画ではそうはいかない。デビルシャークによる捕食場面が人間とサメが一緒の画面に映らない仕様で、観ていて何のカタルシスも呼び覚まさないからだ。またこの映画、訳の分からない演出が非常に多い。先述の星空からサメなんて可愛いもので、エンドロール後に水槽のある売店をブラブラ歩くサメ好き女の映像が10分近く流されるのは流石に正気を疑った。
デビルシャーク自身は優雅に泳いでいる映像ばかりで全く怖くないのに、人間の憎たらしさと演出の不可解さばかりが強く印象に残る。全体的にどうしようもない映画だが、悪魔的存在よりも恐ろしいのは人間、という1点においては漫画版デビルマンに通じるものがあった。