シン・ジョーズ            「評価 B」

サンディエゴのビーチで異変が発生。焼死した魚が相次いで打ち上げられ、高濃度放射線が検出された。そこでライフセーバーで環境学者でもあるジーナが原因究明に乗り出したところ、恐るべき事実が判明。80年代に近くの海でソ連の潜水艦が沈没した。やがて潜水艦からは放射性物質が溢れ出し、一匹のサメを泳ぐ核弾頭「シン・ジョーズ」に変えてしまったのだ。全身焼け爛れたシン・ジョーズは高熱と鋭い牙の二段構えを以て、マリンスポーツをエンジョイする人々を次々と惨殺。ビーチは幾度も惨劇に見舞われるが、FBIはどんな事故が起きても事態を隠蔽するばかり。痺れを切らしたジーナは同僚のカプランたちの協力を得て、独自にシン・ジョーズを討伐することを決意した。オトリの船を用意してシン・ジョーズを誘き寄せ、船ごとサメを爆発させる作戦だ。しかし灼熱を纏うシン・ジョーズには、サメ映画の常識が通用しない。たちまち作戦は破綻し、ジーナたちは追い詰められていく…。

邦題は「シン・ゴジラ」風だが、シン・ジョーズのメルトダウン寸前な痛々しい風貌は「ゴジラvsデストロイア」を彷彿させるサメ映画。そんな有様でも食欲は衰えないらしく、灼けた背ビレでサーフボードを切断する、高熱で船底を突き破る、などの体温を駆使した捕食プレイを披露してくれる。ビーチに上がれば辺り一面火の海に変わり、スコップ等が見る見るうちに溶けていくといった高熱描写も見物となっていた。またそんな体質故に、「ジョーズ」におけるサメの退治方法「ガスボンベを咥えさせて破裂させる」が全く通じないのも特色。ガスボンベを投げつけようものなら一瞬で爆発して、投げた方がバーベキューと化してしまうのだ。
そしてサメの多芸に引っ張られるように、本作は悪趣味な死に様の見本市と化していた。パラセーリングを引っ張っていたボートが炎上し、炎がロープを伝っていき空中火葬。砂に埋もれた状態でシン・ジョーズが突っ込んできて高温の血を顔面に浴びる。中でも素晴らしいのが、辛口グルメレポーターがレストランにやってくるシークエンスだ。散々嫌味な態度を振りまいた挙句に出された魚料理が放射能汚染されたもの。たちまち内臓が爛れて全身真っ赤になって膨張し、店全体を巻き込んで大爆発ときた。爆発までの展開が非常にグダグダなだけに、カタルシスもひとしおだった。
話のテンポは緩慢だし無意味なSNS演出はじめ首を傾げる場面はあるものの、サメ映画において最も重要な2大要素、サメの活躍と人間の死に様に関しては文句のない作品だ。


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