パーム入江の閑静な港町。ここではジャック化学工業の廃液による水質汚染が疑われ、海洋生物学者マイクによる調査が行われていた。雇用を支える工場と何かとトラブルを起こすマイクに町の保安官は初めは良い顔をしなかった。が、浜辺で少年の生首が発見される、何千もの魚が食い荒らされた状態で打ち上げられる、などの異常な現象が多発。廃液の影響で入江に棲息するバラクーダたちが暴れ出し、人や魚を縦横無尽に食い荒らしていたのだ。そこで保安官はマイクに協力を申し出て、町の新聞記者もそれに乗っかり工場を糾弾する記事の執筆にかかった。しかしその矢先、新聞社に何者かが侵入し、記者たちが殺害された。実はこの町では、政府の後押しにより「低血糖化による人体の凶暴化」を実証するための実験が進行していた。低血糖状態にする薬がジャック化学工場で製造され、住民に投与。まだ明確な症状は表れていなかったものの、工場廃液で低血糖化したバラクーダが騒動を起こしたことで事態が顕在化。政府が隠蔽工作を行っていたのである…。
化学物質による生物の突然変異。モンスターパニック映画界隈においてはあまりにも定番すぎる題材だが、公害問題としての側面を掘り下げて社会派サスペンスに仕立てあげたのが本作だ。廃液による事件だけで完結させずに巨大な陰謀を覗かせる脚本はひとひねりしてあるし、後味の悪い結末もとても良い。「なぜ廃液で凶暴化するのか?」に明快な理由づけがされているのにも好感が持てた。モンスターパニック好きとしては後半はバラクーダの影が薄くなり、人類と魚類の直接対決に至らないのは残念。それでもマグロほどの大きさのバラクーダが大量に押し寄せてくる光景は、サメとピラニアのベクトルの違う恐怖感を併せ持っていてなかなかの見応え。全く動かない模型というわけではなく、ちゃんと体がうねってくれるのも嬉しかった。