獣人ヒューアニマ(別題:地獄のいけにえ 獣人ヒューマニア)    「評価 C」

美しい自然の残るメモリアル・バリーに、キャンプ場がオープンした。オーナーの息子デイビットは社会勉強のためにここで働くことにしたが、当のキャンプ場は工事が遅れに遅れ、道路も水道も整っていない状況でオープンを強行する有様。当然来場者とのトラブルが絶えず、デイビットは早々に社会の厳しさを肌身に感じることとなった。
そんな彼の上司、キャンプ場の管理を任されているジョージには秘密があった。ジョージは10数年前に息子を誘拐され、身代金の受け渡し場所としてメモリアル・バリーを指定された。そこで警官隊が現地に赴き罠を張り巡らせたが、敢え無く犯人の逮捕に失敗。犯人は息子を連れたまま、行方をくらませてしまった。それからというもの、ジョージはキャンプ場の開発が始まる前からこの近辺一帯を歩き回り、息子を探し続けていた。
さて、キャンプ場では手癖の悪い肥満児が規則に背いてバイクを乗り回していた。ところが進路上にロープが張られ、バイクは転倒。肥満児が地面に倒れて苦しんでいると、そこに半裸の男が近寄ってきた。彼こそはジョージの息子、獣人ヒューアニマだ。メモリアル・バリーで長年暮らして野生化した彼が、キャンプ場の開発に伴い、人里に出没するようになったのだ。肥満児は野生児の出現に驚きナイフを振り回すが、かえってヒューアニマの逆上を招く。たちまち首を折られ、遺体はキャンプ場に投げ捨てられてしまった。
翌日、死体が発見されたことでキャンプ場は大騒ぎ。続々と来場者が帰っていく中、ジョージとデイビット、そして協力者たちは、殺人犯を捜索するためにライフルを担いで山に入っていった。しかし山の中はヒューアニマのテリトリー。一人また一人と罠にかかって命を落とし、程なくして捜索は中断された。更にヒューアニマはキャンプ場に足を踏み込み、来場者たちを次々と手にかけていく。ヒューアニマは、あまりにも強すぎた。生き残ったデイビットたちは観念し、キャンプ場から逃げ出していったが、ただ一人ジョージだけはキャンプ場に踏みとどまった。彼はヒューアニマが、自分の息子だということを感づいていたのだ。かくしてジョージとヒューアニマの、命を賭した親子喧嘩が始まった…。

当初の邦題が「ヒューアニマ」で最近の邦題が「ヒューマニア」と微妙に紛らわしい、「パワーレンジャー」のロバート・C・ヒューズ監督による殺人鬼ホラー。トリュフォーの「野性の少年」みたいな野生児ヒューアニマが山に立ち入る人間を皆殺しにしていくわけだが、何より特筆すべきなのはヒューアニマの頭の良さだ。こいつは肥満児と遭遇するまでバイクの存在すら知らなかったようで、転倒したバイクに対して警戒した態度をとる。それが翌日になったら、車のタイヤをパンクさせるわ、ガス漏れを起こして爆発を誘うわ、ガソリンに松明を投げ込むわ、挙句の果てにブルドーザーを動かして人々を押し潰すときた。一日で学習するにはあまりにも凄すぎるレベルで、こいつが繰り出す頭脳プレイの数々は、野生児という姿とのギャップもあってなかなか楽しめた。またこいつ、野生児らしくあらゆる動物と心を通じ合わせることも出来るのだが、唯一犬だけが苦手というオバQばりの弱点を持っているのもチャーミング。
ただ脚本はジョージの身勝手さが目立ち、いまいち入り込めなかった。すぐ助けを呼べば良かったところを、自分の息子に危害が及ぶのを恐れたジョージが電話を破壊したせいで被害が大きくなったのだから、たまったものじゃない。こんなオヤジとその息子の対決をクライマックスに持ってこられても、盛り上がる方が難しいというもの。また主人公であるはずのデイビットは、要所要所で博物学の知識を披露するだけで、事件に対して何一つ対処できずに現場を逃げ出してしまう。こいつの存在意義の薄さも、終盤の平坦さに拍車をかけていた。
それにしてもヒューアニマ、この地域に住んでいないヘビをどうやって持ってきたんだろうか。


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