アルティメット・ディザスター           「評価 D」

太平洋上にペトロカル社が設けた石油掘削基地ウィルフォース3が、アメリカに深刻な危機をもたらした。通常よりも遥かに長いドリルで深層の石油を採掘したところ火山層を刺激し、海底から大量のマグマが噴出。更にマグマが海水を熱した結果、上昇気流が発生。あれよあれよと言う間にアメリカ西海岸を覆うほどのスーパーサイクロンを形成してしまった。猛烈な嵐と火山活動、天と地の同時災害は甚大な被害をもたらしていく。海洋大気庁のスパークス博士はこの事態を収めるべく、ペトロカル社のトラビスと共に、対策本部が置かれているペンドルトン海兵隊基地に向かう。道中で様々な異常災害に見舞われながら、2人は何とか基地に到着。ただちに対抗策を実行に移した。まずはヨウ化銀のナノ粒子を搭載したミサイルを嵐の目に撃ち込む作戦に出るが、炎に包まれた嵐の中を戦闘機で突破することができず敢え無く失敗。次に考えたのが、液体窒素で海底のマグマを冷やして海水の温度を下げる作戦だ。液体窒素を積んだタンカーにトラビスが乗り込み、火口の存在するウィルフォース3に向かう。しかし周辺海域はマグマの海と化しており、船体を徐々に蝕んでいった…。

様々な災害が次から次へと襲いかかる、アサイラム社製のパニック映画。マグマに始まり、竜巻、火山灰、雹、火の雨、ダム決壊、地面陥没と実にバリエーションに富んでいるが、あまり壮大さは感じられない。と言うのもこれらの災害の殆どがスパークスたちが田舎道を通過する際に出くわし、大規模な都市破壊は数カット申し訳程度に出てくるだけなのだ。更に各災害の魅力も薄く、火の雨は頭上にカバンを翳せば無傷でやり過ごしてしまうし、ダム決壊は車一台が流されるというスケール感皆無な描写で済まされる。水中撮影が雑で、濁流に流されているはずの人間がプールの中で漂っているだけにしか見えないのも難だ。
そして脚本の方は、人間ドラマを極限まで削ぎ落とし、主人公たちが災害に見舞われ対策を練る姿ばかりを追った内容は、ある意味潔く感じられる。しかし災害の原因となったペトロカル社の存在まで軽視するのはどうか。トラビスたち社員は後悔している様子がないし、会社本部が制裁を受ける描写もない。作劇上のカタルシスがなく、ただでさえ災害描写の弱い本作を一段と平坦なものにしていた。


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