トランスジェンテック社で遺伝子工学を研究するハンフリーズ博士が、中米ベリーズのジャングルで失踪した。それから3ヵ月後、娘の昆虫学者ジーナは父を捜していたところ、彼の残したカメラを発見。それに記録されていた画像から父が立入禁止のカヨ地区にいると判断し、友人ロンダと共に行ってみることにした。ところがそこは、食人部族のガリフナ族がコカインを栽培して密輸していることから、駐留する米軍とたびたび武力衝突を繰り返す危険地帯。2人はカヨ地区に入るなり、ジョン率いる小隊に見つかって捕えられてしまう。しかし事情を話すと彼らは協力を申し出てくれ、共にジャングルの中を進むこととなった。道中で襲い掛かってくるガリフナ族たちを、必死で追い払うジョンたち。彼らがいればジャングルの中も心配ない──と思いきや、そこに恐ろしき奴らが現れた。トランスジェンテック社が遺伝子研究によって極秘に開発した、全長2メートルの巨大殺人蜂。それが無数の群れとなって、空から襲い掛かってきたのだ。奴らは鋭い針と発火能力を有し、卵を産みつけるために人間たちを巣に連れ去ろうとする。かくしてジーナたちとガリフナ族と巨大殺人蜂、三つ巴の戦いが幕を開けた…。
巨大蜂映画に食人族の要素も取り入れたTVムービー。巨大蜂は体内の毒素を反応させて炎を吐き、副腎から分泌されるフェロモンに吸い寄せられ、コカインに拒絶反応を示す──と細かい設定が決められていて、それを軸にストーリーが動いていく。コカインが苦手なことからガリフナ族の集落を襲わず、科学の産物と原住民が奇跡的なバランスで均衡を保っているという状況設定は良くできている。しかし主人公が昆虫学者なものだから、すぐに弱点を見つけられて対策を練られてしまうのがまずかった。中盤以降の巨大殺人蜂たちは完全にジーナたちにいいように扱われ、ガリフナ族はジーナたちの思惑通りに巨大殺人蜂によって殲滅されていく。いつまで経っても巨大蜂たちが主人公を出し抜く機会が与えられず、どうにも情けなく感じられるのだ。巣に潜入するクライマックスにおいても「コカインが切れるかどうか」というタイムサスペンスが盛り込まれているが、すぐに話の興味は幼虫に体内を食い荒らされる人間たちの方に動き、いまいち締まらない感じだ。VFXのクオリティがTVムービーにしては上出来なのが、せめてもの救いとなっていた。
一方で食人族映画としては、人肉は調理されて器に盛られた状態でしか出てこないのが少し残念。けれども集落における怪我人の治療やコカイン飲みなどの儀式は、しっかり妖しげな雰囲気を放っていて作品の魅力となっていた。