ナチス・イン・センター・オブ・ジ・アース       「評価 C」

南極のクイーン・モード・ランドに存在する、ニブルヘイム観測所。ここではレイスタッド博士の指導のもと、モスたち若くて有望な科学者が研究を行っていた。だがある日、細菌の採集作業をしていた研究者2名が忽然と姿を消した。採集現場には血痕と足跡が残されており、レイスタッドたちはそれを頼りに雪原を進む。やがて彼らは、地中深くにのびる巨大な陥穽に辿り着いた。数十メートルもの深度を、ロープに掴まり下降していく。するとその底には、氷壁を通じて降り注ぐ太陽光によって木々が生い茂る、温暖な地底世界が広がっていた。未知の世界の発見に、モスたちは驚きを隠せない。しかしそこに軍服を纏った一団が現れ、彼らを取り囲んだ。軍服には鉤十字の腕章が。そう、ここはナチスの地下帝国だった。大戦中に地底世界を発見したナチスは、ベルリンが陥落すると本部をこの地に移し、虎視眈々と逆襲の機会を窺っていたのである。あまりにも衝撃的な事実に、愕然とする一行。更にナチスの科学者メンゲレ博士が登場すると、レイスタッド博士は高らかに敬礼した。実はレイスタッドは、ナチスのスパイだった。優秀な科学者を誘拐してナチスの不老不死研究に奉仕させるため、行方不明者の捜索を装ってモスたちをこの世界に導いてきたのだ。だがモスたちは、当然彼らの協力要請を拒否。するとナチスは、反抗的な者を取り押さえ、脳や胎児から幹細胞を抜き取り始めた。摘出された幹細胞は、研究室の奥に鎮座している鋼鉄製の装置に注入される。とその時、装置が不気味な音を立てて動き出し、人型のロボットへと変形した。その頭部には、チューブで繋がれたアドルフ・ヒトラーの生首が! ナチスの科学力は60年の進歩を経て、死者蘇生をも可能にしていたのだ。かくして現代に甦ったメカヒトラーは巨大UFOを起動させ、南極大陸上空に浮上。再び世界を我が物にせんと行動を開始した。一方その頃、辛うじてナチスの処刑を逃れたモスは、ヒトラーの野望を阻止するべくUFO内を駆け回っていた…。

地下からナチスが攻めてくる、アサイラム版「アイアン・スカイ」。低予算ゆえにVFXは極めて貧弱だし、雪原ロケなんて無理だから雪原も氷穴もスタジオ撮影&風景合成で、安さ爆発な映像が哀愁を漂わす。しかし本作、ナチスのイメージとして女体拷問モノの要素を前面に押し出していたのは素晴らしかった。顔にメスで切り込みを入れて表皮を剥ぎ取ったり、脳味噌を露出させて注射器を刺したり、機械で胎児を吸引したり。人体実験シーンにおける数々のゴア描写は、チープなメイクと陰湿な雰囲気が相俟ってなかなかのおぞましさを醸し出しており、作品全体の印象をぐっと良いものにしていた。そして実験がフェードアウトすると、代わりに登場するメカヒトラーがこれまたインパクト抜群。腕にはマシンガン、胸からレーザー、更に消火器を搭載していて体が燃えても即鎮火という無駄な高性能まで披露し、大いに笑いを誘ってくれた。予算がなくとも本家とは別路線で楽しませようという心意気を感じさせる、単なる亜流に留まらない魅力をもった作品だ。


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