インクレディブル・ハメル          「評価 D」

デビッド・ブルース・バナー博士には、美しい妻ローラがいた。2人は互いに愛し合っていたが、ある日乗っていた車が事故に遭い横転。運よく車外に出たデビッドは、車の下敷きになったローラを助けるべく車を持ち上げようとした。しかしいくら力を込めても車はびくともせず、やがてローラは命を落としてしまった。以来、デビッドは自責の念に駆られ、人間の潜在能力を引き出すための研究に没頭した。助手エレーナと共に、窮地において並外れた力を発揮した経験のある人間を集め、聞き取り調査を行う。その結果、力を引き出した人間は一様にセックスをしており、オルガズムに達する寸前の段階で窮地に直面していることが判明。ならば性的興奮を人為的に阻害すれば、潜在能力を引き出すことができるのでは。そう考えたデビッドは、電気信号を妨害するガンマ線に目をつけた。早速自らの性的興奮を高め、ガンマ線を浴びてみる。ところが、彼の肉体には何の変化も訪れなかった。落胆したデビッドは、ひとまず帰宅することにし、車に乗り込んだ。しかし研究所を離れた矢先、運悪くタイヤが破裂。更に交換しようとしたら、手を滑らせて流血してしまった。踏んだり蹴ったりのデビッドは、強いストレスを感じた。すると、その時だった。ストレスが契機となり、ガンマ線の効果が一気に全身を駆け巡った。筋肉は盛り上がり、体色は緑色に染まる。今ここに、新たなるスーパーヒーロー・超人ハルクが誕生したのだ。だが変身したデビッドは理性を失っており、乗っていた車を徹底的に破壊した上、キャンプに来ていたレズカップルの前に現れ、岩を投げたり木を薙ぎ倒したりと散々に暴れ回って恐怖に陥れた。やがて変身の解けたデビッドには、その間の記憶が残されていなかった。エレーナと共に状況を再現し、再び変身しようと試みるデビッド。一方その頃、ナショナル・レジスター紙の新聞記者ジャック・マクギーが、キャンプ客を襲った緑色の怪人の行方を追っていた。彼は現場近くにデビッドの車が残されていたことから、デビッドの研究所に何かあると睨み、潜入取材を試みる。すぐに見つかり、デビッドたちと一悶着あった末に追い払われてしまうが、そんな折に事件が起こった。研究所内でガス爆発が発生し、エレーナが瓦礫の下敷きになってしまったのだ。もうローラの時のような失敗を犯すわけにはいかない。デビッドはハルクに変身すると、気合いで理性を保ち、エレーナの救助に向かった…。

変身要因としてガンマ線に性的興奮をプラスする力技が素晴らしい、超人ハルクのパロディAV。「インクレディブル・ハルク」っぽい邦題が付けられているが、ベースとなっているのは77年から放送されたTVドラマ版の方だ。ストーリーはまんまドラマの序盤の展開をなぞっているし、ハルクのメイクも髪の毛まで緑色に染められており、「アーンイヤーンマン」以降のパロディAVに出ているハルクとは明らかに異なっていた。
そんな本作、他のアメコミパロディAVに比べて原作に忠実なだけあって、ストーリーラインがしっかりしているのが特徴。AVなので映像は貧弱なれど、セックスシーンさえ省けば「ハルク誕生篇」として公開しても違和感がないぐらいだ。しかし一方、パロディAVとしては大いな欠陥を抱えていた。それは主要人物のエロシーンがやたらと少ないことだ。潜在能力を引き出した事例を聞き取るという名目で、本編に関係の無い一般人の絡みが幾つも盛り込まれる。そのくせ変身したハルクがハメル場面は1シーンのみという体たらくで、ヒーローの夜の活躍を期待している身には大変厳しい内容だった。


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