世紀の怪物 タランチュラの襲撃      「評価 B」

アリゾナ州の砂漠地帯。人里離れた施設で栄養剤の研究をしていたエリック教授が、頭が畸形化した死体となって発見された。医師マットは彼の死体を検分するが、どうにも腑に落ちない。彼のような先端肥大症は通常、長い時間をかけて進行する。しかしエリックは数日前まで何の変哲もない姿をしており、この短期間で死に至るまで深刻化するのは、医学の先例を見てもまずあり得ないことだった。そこでマットは彼の研究内容に秘密があるのではと思い、共同研究者だったディーマー博士に疑いの目を向けた。ちょうどその頃、女学生スティーヴが研究所の助手として招かれ、町を訪れていた。マットは偶然知り合った彼女を研究所に送り、以後も連絡を取り合うことで、ディーマー博士の研究内容を探る。すると彼女から得られた情報は、あまりにも信じ難いものだった。研究所で作られていた栄養剤には生物を急成長させる効果があり、投与されたウサギは生後数日で成体になってしまうというのだ。それを聞いたマットはスティーヴに頼んで研究所を見せてもらい、実際に急成長したウサギやネズミを目の当たりにした。彼が帰った後、ディーマーはスティーヴに対し、他人に研究内容を明かしたことを叱責する。しかしその時、ディーマーの顔は醜く変貌していた。数日前、エリックは栄養剤が無害であることを証明するために、助手の学生ポールと共に薬を自らの肉体に投与していた。その結果、エリックは頭が畸形化して死亡。ポールもまた顔が変形して発狂し、研究所内を暴れ回った挙句、ディーマーに薬を投与して息を引き取った。そのためディーマーの肉体は、栄養剤の作用で変質しつつあったのだ。
一方、町では家畜が襲われる事件が続発。現場では謎の液体が水溜りを作っており、マットが調べたところ、タランチュラの吐く毒液であることが判明する。実はポールが暴れた際、栄養剤を投与された一匹のタランチュラが逃げ出した。タランチュラは日を追うごとに成長し、牛や馬を捕食するまでに巨大化していたのである。やがて研究所もタランチュラによって破壊され、ディーマーが命を落とす。逃げ出したスティーヴを保護したマットは、タランチュラが町に接近しているのを知り、空軍に出動を要請した…。

「大アマゾンの半魚人」のジャック・アーノルド監督による巨大クモ映画。巨大タランチュラは実物を合成することで表現されているが、動くスピードを適度に遅くして見事に重量感を作り出していた。他にも山の向こうから巨大クモが出現する構図を多用したり、警官が襲われるカットではクモの口からのアングルで捉えたりと、巨大さに説得力を持たせる演出が随所に挿し込まれ、実物合成にありがちなチープさを殆ど感じさせなかった。そしてタランチュラの襲撃描写では特に、研究所に巨体で圧し掛かるシーンが圧巻。窓に巨大タランチュラの顔が大写しになるところから始まり、潰されて崩れゆく研究所の様子が、脚の実物大模型も使って実にスリリングに描かれていた。しかしこの作品、畸形化した顔に象徴される怪奇趣味が蔓延する前半と、米軍が活躍する単純明快な後半とのギャップが激しすぎて、完全に違った映画に見えてしまうのは気になった。


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