アイアン・ウォーズ         「評価 C」

1944年。ナチスの猛攻に敗走を続ける米軍は、遥か彼方のオーストラリアまで戦線を後退していた。そんな中、米軍が持ち込んだピューマが逃げ出し、現地人を襲う事件が発生。ただちにキンダーマン大尉やカール軍曹をはじめとする5人の特殊部隊が派遣され、ピューマ退治にあたることになった。幾つもの死体が転がる岩場で、餌の肉と、カール軍曹が持ってきた特殊な電波を発生する機械を設置し、ピューマを誘き寄せようとする。ところがその晩、機械が突如発光し、甲高い音を発した。5人はたまらず気を失い、目が覚めると既に夜が明けていた。しかし、辺りの様子がおかしい。絶滅したはずの猛獣が徘徊し、森の中では巨大な蚊が飛び回る。実はカールが持ってきた機械は、タイムマシンだったのだ。今から数年前、500万年前の地層からドイツ製のUFOが発掘された。UFOにはタイムマシンが搭載されており、どうやらナチスはこれを用いて歴史改変をしようしたが、何らかの事情で500万年前に飛んだきり動作が停止したらしい。そこで諜報局はカールに対し、タイムマシンで500万年前に飛び、新品のUFOを回収するという任務を与えたのだ。事情を聞いたキンダーマンたちは山の中を歩き回った果て、UFOを発見する。だがその時、カールは豹変。キンダーマンたちの動きを封じると、自分1人だけがUFOに乗り込んで現代に帰っていった。カールの正体は枢軸国のスパイだった。そこでキンダーマンたちは彼を追うべく、自分たちが飛んできたタイムマシンを作動させた。500万年の時を飛び越え、周囲の景色が見慣れたものに戻っていく。現代に戻ったことを確信したキンダーマンたちは、カールのUFOを探して森を彷徨う。しかしそんな彼らの前に、ヘルメットを被った蜘蛛型ロボットが出現した。ロボットは自分のことを、肉体改造したカールだと告げた。キンダーマンたちは現代に還るつもりが、少しタイミングがずれて300年後に来てしまったらしい。その間にナチスはUFOを始めとするオーバーテクノロジーの数々で世界を制し、300年を経てもなお、第25帝国となって君臨・繁栄を続けていたのだ。キンダーマンたちはカールたち蜘蛛型ロボット軍団の攻撃を受け、窮地に立たされる。最早彼らには、絶望しか残されていないのか…。

「ナチスはタイムマシンを開発していた!」という、「アイアン・スカイ」に負けず劣らずのトンデモ設定なオーストラリア映画。でも現代になってその事実が明らかになった「アイアン・スカイ」とは違い、本作の起点となる時代はナチスが現役で暴れ回っている大戦中。タイムスリップする先も遠い過去か数百年後の未来と両極端で、現代社会との接点が皆無だった。ラストに次回作に続く旨のクレジットが入るので、次回作以降は歴史が修正されていくのかもしれない。しかし少なくとも本作の範囲内では、折角のトンデモ設定が隔絶した世界での絵空事として完結しており、あまり面白みが感じられなかった。
そんな本作だが、巨大蚊や蜘蛛型ロボットといったクリーチャーの活躍具合は楽しかった。巨大蚊は「モスキート」さながらの実物大ハリボテの存在感が目を引くし、蜘蛛型ロボットはヘルメットを被ったデザインは勿論のこと、ハーケンクロイツ型UFOから発せられる怪光線で人間を蜘蛛型ロボットに改造するという増殖方法や、金属ペニスを形成して男のケツを掘る悪趣味機能など、実に濃いキャラクター性を秘めていた。


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