エイリアン・オリジン         「評価 D」

2011年10月、ベリーズの密林に派遣された米軍部隊が消息を絶った。隊にはジャーナリストのジュリアが同行しており、事件から半年後、彼女の撮影した映像だけが発見された。本作はその映像を基に、彼らの身に起こった事件を追っていく擬似ドキュメンタリーである。
深い森の中を進んでいた一行は、海から250キロ離れた陸地に、朽ち果てたボートを見つける。ボートにはSDカードが残されており、ジュリアたちはデータとして記録されていた映像を再生する。だがその映像は、北極圏で海洋生物の観察していたボートが謎の光によって空に吸い上げられていくという、あまりにも常識を逸脱したものだった。
翌日、一同はマヤ文明の古代遺跡に辿り着く。そこではホールデン博士率いる調査隊によるキャンプが設けられていたものの、どういうわけか人の気配はない。テントの中には、彼らの記録映像だけが残されていた。ホールデンたちはマヤ人が神聖な地として崇めていた洞窟を探検中、人間とは明らかに違う異形の頭蓋骨を発見。その直後に何者かに襲われ、命からがら逃げ回る──ここで、映像は途切れていた。
ジュリアたちは付近の捜索を行った結果、映像に写っていたホールデンの助手と合流。彼女の話によれば、ホールデンは“奴ら”に攫われ、早く救出しないと危険な状態らしい。そこでその日の晩、部隊は彼女の案内により、“奴ら”の根城へと向かった。闇の中から強い光を放つその建物は、紛れもなく空飛ぶ円盤だった。中に潜入した一行は、ホールデンの捜索を行う。しかし幾ら探しても彼の姿は見つからず、止むを得ず撤退することにした。とそんな時、助手が円盤内に安置されていた例の頭蓋骨を見つけ、思わず手に取った。瞬間、けたたましい警報が鳴り響く。ジュリアたちは慌てて円盤から脱出。だが“奴ら”はすでに、円盤の中を荒らした彼女たちの追跡を開始していた…。

「バトル・オブ・ロサンゼルス」「ビーチ・シャーク」のマーク・アトキンス監督によるSFアクション映画。毎度お馴染みアサイラム社が「プロメテウス」の便乗映画を作ろうとしたが、「プロメテウス」が公開ギリギリまで作品内容を秘匿。そのため「人類の起源」「異星人」といったキーワードだけで映画を作るしかなく、舞台設定といいPOVによる撮影といい、本家とまるで似つかない内容になってしまった。
そんなわけで便乗映画のくせにオリジナリティの強い本作だが、POVによる盛り上げ方が壊滅的に下手だった。何よりも気になるのが、クリーチャーの姿を全く写さないという点。撮影しているのは好奇心盛んなジャーナリストという設定なのに、どういうわけか戦闘シーンでも米軍ばかりにカメラを回し、彼らの銃口の先にいるであろう未知の存在には少しも興味を向けようとしない。これによって大いに欲求不満が溜まる上、見せ場と呼べるものが音による驚かしばかりで単調に感じられてしまう。またPOV映像の中でPOV映像を流すという入れ子構造は斬新だが、正直言って臨場感を失うだけであまり効果的とは言えない。むしろ都合よく映像が残っていることでリアリティを削ぐデメリットの方が大きく感じられた。ラストのオチも極めてありきたりなものだし、終始微妙な空気が漂っていた。


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