拷問の魔人館              「評価 C」

ロンドンでヌードモデルをしているアンマリーは、パーティーで知り合った物静かな青年マークと恋に落ちた。ある日、実家まで一緒に来ないかとマークに誘われたアンマリーは、喜んでそれを承諾。そして週末、マークの運転する車に乗り、人気のない郊外にそびえ立つ古めかしい屋敷へとたどり着いた。ところが彼女が足を踏み入れた矢先、女中らによってマークから引き離された。囚人服に着替えさせられ、法廷のような広間へと連れて行かれる。そこには判事の格好をしたマークの父デズモンドと、母ウェイクハーストが待ち構えていた。実はこの2人、生粋の精神異常者だった。かつて刑務所として使われていたこの屋敷に住み着いてからというもの、自らを風紀を正す者と称するようになり、反社会的な人間を捕まえては一方的な裁判にかけていたのである。アンマリーもまたヌードモデルで風紀を乱したことから有罪となり、牢に閉じ込められた。ここでは矯正プログラムと称した折檻のみならず、反抗的な囚人を絞首刑で処罰するという狂気の沙汰が日常的に行われていた。自らの命の危険を感じたアンマリーは、女中たちの監視の目を掻い潜って脱獄。森の中を逃げ回っていたところをトラック運転手に拾われ、何とか危機を脱したかに思われた。しかしこの運転手、怪我をしているアンマリーを病院に連れて行こうと、地元住民の道案内で車を走らせた結果、事もあろうにマークの屋敷へと来てしまった。彼はアンマリーの身柄を屋敷の人間に引き渡すと、「良いことをした」と意気揚々と帰っていった。かくして連れ戻されたアンマリーは、脱走の罪で絞首刑にかけられることに。一方その頃、アンマリーのルームメイトのジュリアは、恋人トニーと共に、失踪した彼女の行方を追っていた。そんな中、トラック運転手がアンマリーを保護していたとの情報を聞きつけ、ジュリアは例の屋敷に向かうのだった…。

ふしだらな女性が謎めいた青年と出会ったことで理不尽な暴力に晒されるサスペンス映画。女囚モノとしては刑務所内の生活風景をろくに写さないうちに脱獄に突入して物足りないし、看守たちによる鞭による折檻シーンも今ひとつな感じだった。手足を縛り付けた女囚の背中に鞭を打ちつけるわけだが、最初の鞭打ちシーンでは開始直前になって、突然カメラの前のドアが閉められてしまう。その後は暗い画面に鞭の音と女性の悲鳴が響き渡るばかりで、肝心の光景が全く拝めないときた。これは焦らしプレイの一環だろうか。その次のアンマリーが折檻を受ける場面も似たような具合で、鞭が背中に当たる様子は見せず、ただ彼女の苦悶の表情だけをアップで捉えるから欲求不満が溜まってくる。
そんなわけで本作、キワモノ映画としてはサービス精神の希薄さが気になって仕方ない。けれども恐怖映画としては、安心させてから絶望の底に突き落とす展開が秀逸で結構楽しめてしまう。これなら半端なSM要素を入れるよりも、恐怖路線に専念した方がまとまりが良くなったのではないか。そう思えてくる作品だった。


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