ビーチ・シャーク              「評価 B」

アメリカ東海岸沖に浮かぶ小島、ホワイト・サンズ。長引く不況で人口減少が止まらないこの島に、町長のドラ息子ジミー・グリーンが帰ってきた。ジミーは町興し事業として、ノリノリの音楽によるダンスフェスティバル“サンドマン・フェス”を開催し、春休み中の学生たちを島に招き寄せることを立案。町長を説得し、出資者を募り、着実に準備を進めていった。しかし一方で、島のビーチでは人間が何者かに襲われ、欠損した遺体となって発見される事件が続発。保安官のジョンが海洋研究所のサンディに調査を依頼したところ、遺体はサメに襲われたことが判明する。海底の砂地に潜って獲物を食らう、前代未聞の鮫ビーチ・シャーク。そいつが獲物の匂いに連れられて、砂浜にまで生息地を拡大してきたのだ。早速ジョンたちはビーチを封鎖し、監視を強化することに。このままではサンドマン・フェスが中止になってしまうと、焦るジミー。だがその晩、ビーチ・シャークは砂浜に来ていた町長を食い殺すと、その勢いで工事中のケーブルに突っ込んで感電し、盛大に爆死を遂げた。かくしてビーチの閉鎖は解除。ジミーは亡き父を弔うためにも、サンドマン・フェスを予定通りに開催させた。彼の目論見どおり、島には大勢の学生が押しかけ、踊って騒いでの大盛況。これで島の経済は再生するかに思われた。ところが砂浜に潜んでいたビーチ・シャークは、一匹だけではなかった。何匹ものビーチ・シャークが砂の中から飛び出しては、学生たちに食らいつき、たちまちビーチは血みどろの地獄絵図に。ジョンとサンディはこの惨事を食い止めるべく、サメ退治の専門家アンガスや責任を感じたジミーと共に、ビーチ・シャークの一掃に乗り出した。スピーカーから大音響を流してビーチ・シャークたちを燃料をまいた砂地に集め、燃やして一網打尽にする計画だ。ところがビーチ・シャークが接近した途端、スピーカーが断線して音が止まってしまった。このままではビーチ・シャークたちが散り散りになり、計画が破綻する。そこでジミーは自ら砂地に降り立ち、走り回ることでビーチ・シャークたちを誘き寄せることにした…。

「バトル・オブ・ロサンゼルス」「アバター・オブ・マーズ」のマーク・アトキンス監督による変り種のサメ映画。ビーチ・シャークは泳ぐ原理についてろくに説明されないのは腰砕けだが、地中から飛び掛かったり引きずり込んだりする神出鬼没な暴れ様が、大量の血糊と共に描写されていたのは痛快だった。サメの砂像の中から本物が飛び出してくるなんてユーモア要素も心地いい。
そして本作、何より特徴的なのがジミーの存在だ。ビーチ・シャークが他にもいることを把握していたのにサンドマン・フェス開催を強行したのは弁明不可能な落ち度であるが、思いを寄せていたジョンの妹が食い殺されたのを期に改心。自らを犠牲として騒動を収める姿は、何とも格好いいものがあった。多くのサメ映画においてサメに食われて喝采を得る存在でしかない「イベント開催を強行する人間」に、ここまで寄り添った脚本があっただろうか。この後に更なるビーチ・シャークの襲撃があり、彼の死が前座のような扱いだったのは残念だが、定番とは異なるアプローチで物語を盛り上げていたのは大いに好印象だ。


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