ハリウッドで怪物造形の仕事をしているマーティンは、新しい映画の撮影中に監督と対立し、担当を降ろされてしまった。このショックから立ち直るため、恋人ニコールと一緒に催眠セラピーを受けることに。ところが催眠状態に陥った瞬間、彼の内に潜むモンスターが目を覚ました。その翌日、マーティンのもとに、田舎に暮らす母親が獣に惨殺されたとの報せが舞い込んでくる。すぐさま生まれ故郷のバロンヴィルに帰り、母親の葬儀に参列する。だが惨劇は、これで終わりではなかった。義父をはじめ、村にいた人間が相次いで謎の獣人に襲われ、命を落としていく。しかも犠牲者は、襲われる直前にマーティンと揉めていた人物ばかり。そのため保安官は、マーティンが特殊メイクで獣人の仕業に見せかけて犯行に及んだと推理し、彼を拘留した。しかしその後も、村に獣人が現れ、新たな殺人を引き起こす。実はマーティンには、潜在意識が実体化して殺人を犯す不思議な力があった。幼い頃にそれで人を殺してから長らく封印されていたのだが、催眠セラピーで潜在意識と向き合ったことで復活。憎しみの心が醜悪な獣人の姿となり、村中を血に染めていた…。
あの酷すぎるオチが衝撃的な密室サスペンス映画「CUBE IQ HAZARD」のベンジャミン・クーパー監督による、「禁断の惑星」テイストのモンスターパニック。獣人は鋭い牙が印象的なデザイン。殺害の光景がマトモに画面に映ることが少ない上、珍しく映されたカットも齧られた後頭部が作り物感丸出しで落胆させられ、モンスター映画としては薄味な印象だ。しかし本作、マーティンの能力に関する描写は目を引くものがあった。何処からともなく黒い汚水が湧き上がるところといい、ニコールとのセックス中に能力が発動して獣性を露にする場面といい、やや平凡ながらもツボを抑えた演出で不安を掻き立ててくれる。またオチが弱いのは相変わらずだが、破綻まではしておらず、十分に許容できる範囲内に収まっている。「CUBE IQ HAZARD」に比べると、格段の成長が窺える出来だった。