マンイーター            「評価 B」

オーストラリアのノーザンテリトリー州にある、カカドゥ国立公園。広大な湿地帯に無数のイリエワニが棲息するこの地では、体長6メートル超のワニを間近で見物できるリバークルーズが観光客の人気を集めていた。そこで新聞記者のピートは取材のため、他の観光客らと共に、ケイトとその愛犬ケビンがガイドを務めるクルージングに参加した。途中、ケイトの知り合いのニールが妨害してくるトラブルがありながらも、大事には至らずにクルーズは終了。しかしボートが帰路につこうとした時、上流の方角で救難信号が出ているのを観光客の1人が目撃した。ケイトは急遽ボートの進路を変更し、本来立入禁止の区域に突入し、現場に到着する。そこには転覆したボートの残骸と、水面に浮かぶ死体らしきものが。どうやらイリエワニに襲われたらしい。とそこへ、突如イリエワニが出現し、ケイトたちのボートに体当たりをしてきた。ボートは中州に押し上げられ、航行不能に。無線機はなく、助けを呼べない。更に川は増水しており、中州が沈むのは時間の問題。このままでは、全員がイリエワニの餌食になってしまう。そんな中、偶然やってきたニールが同じくボートを攻撃され、一行に合流。彼のアイディアで、川辺の木にロープをかけて脱出しようとしたが、敢え無く失敗。次にピートは、錨に餌をつけてワニに喰わせ、動きを封じている隙に陸地まで逃げる作戦を立て、実行に移した。イリエワニはまんまと餌にひっかかり、ロープを引っ張りもがき苦しむ。その間に観光客たちは川を泳ぎ、次々と陸地に逃げ込んだ。だがケイトが泳ぎ出したとき、ワニは錨から脱出。彼女に食らいつくと、自らの巣へと連れ去っていった。ピートはその様子を目の当たりにして愕然となりながら、陸地まで泳いでいった。ところが上陸した途端、犬のケビンが彼を先導するかのように森の中を走っていった。後をついていくと、入江の岩場に辿り着く。そこにはワニに襲われた人々の死体が転がっていた。そう、ここはイリエワニの巣だった。そして巣の奥には、重傷を負いながらも命を繋ぎとめていたケイトがいた。ピートは彼女を連れて巣を脱出しようとするが、戻ってきたイリエワニと鉢合わせ。侵入者を排除するべく猛然と攻撃してくるイリエワニに、ピートは懸命に立ち向かった…。

湿地帯に観光に来た人々がワニにボートを破壊されて危機に瀕する──という舞台設定が同年同国制作の「ブラック・ウォーター」と丸被りしていた、オーストラリア産ワニ映画。全体的な出来で言えば「ブラック・ウォーター」の方に軍配が上がる。本作は遭難する人数が多いことや、川の増水が台詞による説明で済まされていたことなんかがあって、追い詰められたという絶望感に乏しかった。またワニの襲撃回数は本作の方が多いものの、大抵の襲撃は画面上で直接描写されず、「物音がして振り返ったら1人がいない」といった具合で処理されている。そんなものだから残虐表現は望めず、いくら数を重ねたところで心に響いてこなかった。
そんな本作だが、終盤のワニとの対決シーンは白眉の出来。ろくな武器もない状況で巨大なワニの攻撃をかわし、反撃の糸口を見つけていくシチュエーションは幾らなんでも美味しすぎる。武装して立ち向かうのが当たり前のワニ映画において、ここまで生身の戦いを見せ付ける作品が他にあっただろうか。画面が暗すぎるのが少々難ではあるものの、このクライマックスだけでそれまでの凡庸な印象は一気に吹き飛んでしまった。盛り上げるべきところを心得ている、実にナイスな作品だった。


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