ローラは近頃、幻聴に悩まされていた。カウントダウンのような声が、絶えず頭の中を反響していたのだ。彼女は精神科医のマシュウィッツに自身の症状を打ち明け、ニューヨークの海岸を歩きながら、症状を和らげる薬を貰えないかと要求していた。しかしその時、カウントダウンが0に達した。空から強い光が降り注ぎ、ローラは昏倒する。目を覚ますと、すぐ隣にいたはずのマシュウィッツがいない。それどころかニューヨーク全体が、人影のないゴーストタウンと化していた。いったい何が起こったのか。わけも分からぬまま町をさまようローラの前に、幾つものリングで構成された球形のロボットが出現。高速回転しながら彼女に接近してきた。慌てて逃げ出したローラは、謎の男ニールによって助けられ、事なきを得た。ニールは精神に異常を来たしていたが、自分以外の人間がいることはローラにとって大きな希望となった。彼女は他にも生き残りがいないか、散策を再開した。すると茫然と佇む集団を発見。早速近づいてみたが、彼らの顔には生気がない。不審に思っていると、突如として腕を振り上げ襲い掛かってきた。彼らは皆、ロボットが大気中にばら撒いたナノボットを吸い込んだことによって脳を改造され、ゾンビと化していたのだ。ローラは混乱しながら、近くに落ちてあったバールのようなものを拾って応戦。しかし多勢に無勢で瞬く間に追い詰められて危殆に瀕する。そんな状況を助けてくれたのは、戦場でしか理性を保てない軍人ステディだった。彼は携帯する銃でゾンビたちを蹴散らすと、ローラを近くの倉庫へと連れて行った。倉庫の中には、ゾンビ化を免れた生存者たちが身を潜めていた。彼らはローラやニールと同じように、精神に病を患っている。どうやら最初から脳に異変を来たしているとナノボットがうまく機能せず、ゾンビ化を免れるらしい。そこで彼女らは力を合わせ、ゾンビに立ち向かいながら情報を集めることにした。その結果、ロボットたちは世界侵略を狙う異星人が送り込んだものであること、ロボットたちを操っているアルファという司令官的存在を倒せば、ロボットやゾンビたちは機能停止することが判明する。しかしアルファに接近すると、それだけ体内のナノボットに送られる信号が強くなり、たとえ精神異常であっても意識を乗っ取られる危険が高くなる。1人また1人と倒れていく中、ローラは単身アルファの本拠地へと乗り込んだ…。
「エイリアン・リベンジ」のアンドリュー・ベルウェア監督によるSFゾンビ映画。異星人の侵略モノということで「世界侵略:ロスアンゼルス決戦」を意識した邦題になっているが、本作の侵略者はナノボットで人間たちの脳を改造して従える頭脳派であり、ロスアンゼルスの力押しエイリアンとは方法論からして180度違う。軍人が1人出てくるだけでミリタリー色は極めて希薄だし、あまりにも「世界侵略:ロスアンゼルス決戦」を彷彿とさせる点に乏しく、無理のある邦題だと言わざるを得ない。
そんな本作は、序盤の謎めいた展開と「精神異常者だけが正常でいられる」という世界観には心惹かれるものがあった。しかしそれらを支えるはずの演出や設定周りが洗練とは程遠い感じで、あまりにもボロボロすぎて楽しむことができなかった。とりわけ酷さが際立っていたのが、ゾンビたちとの戦闘シーンだ。スピード感溢れるスタイリッシュな雰囲気を出そうという意図は十分伝わってくるのだが、本来役者の動きやカメラワーク、カット割で演出するべきところを、カメラの早回しとチープな特殊効果だけを駆使してそれっぽく作ろうとしているから、完全に上滑りしていて薄ら寒さばかりを感じてしまう。また設定周りもやたら煩雑な割にはしっかりストーリーに組み込んでいるとは言いがたく、ゴチャゴチャした印象が強く残る。アンドリュー・ベルウェア作品ということで観る前からさほど期待はしていなかったものの、序盤の雰囲気が結構良かっただけに落胆を覚えてしまう作品だった。