アルマゲドン2012 マーキュリー・クライシス         「評価 D」

突如太陽から放たれた、強力な磁気嵐。それは地球軌道上の人工衛星を故障させるばかりでなく、とんでもない事態を引き起こした。水星の公転軌道が大きく歪み、地球に接近してきたのだ。このままでは地球との衝突は必至。米軍はこの最悪の事態を回避するべく、ミサイルを撃ち込んで水星の軌道をずらそうとした。しかし水星は強い磁気を帯びており、ミサイルの弾道はことごとく捻じ曲げられてしまう。最早人類に、生き残る術はないのか。一方、磁気嵐が発生したときに水星に接近していた宇宙船があった。水星探査船ノーチラス号だ。磁気嵐の影響でクルーの大半が死亡し、唯一生き残ったヴィクトリアは、地球へ救難信号を送っていた。衛星が使い物にならなくなった状況下、その電波を傍受したのは、海賊放送局を営む学生のクリストファーとブルックだった。彼らは無線機に独自の改造を施しており、遠い宇宙までの交信を可能としていたのだ。早速ヴィクトリアの指示に従い、彼女の夫の物理学者ジェームズ・プレストンと合流すると、無線機で彼女と交信させた。かくしてヴィクトリアとジェームズはお互いの事態を把握すると、この危機的状況を打開するため、ジェームズが以前から進めていた研究「プロジェクト7」を実行に移すことにした。それは地球に接近する天体を、小惑星をぶつけることによって軌道を逸らし、危機を回避するというものだ。ジェームズが指示を出し、ヴィクトリアがノーチラス号を操縦して付近の小惑星を動かしていく。だがその間も、惑星衝突の時は刻一刻と迫りつつあった…。

「アルマゲドン2009」のポール・ジラー監督による天体パニック映画。暗黒物質が地球を襲う「アルマゲドン2012」とは当然無関係の内容だ。「アルマゲドン2009」が惑星衝突よりもそれに付随する電磁波による恐怖をメインに据えていたのと同様に、本作における地球上の災害も磁気によるものが大きくクローズアップされていた。具体的には、水星の磁気に吸い寄せられて自動車などの金属類が宙に浮かび、やがて地上に落下して被害をもたらす──といった内容だ。しかしこの災害描写、あまりにもリアリティに欠ける。水星は接近を続けていて磁力の影響は強まる一方のはずなのに、何故時間経過にともない金属類が落下するのか。ジェームズたちが「浮かんでいるものに木や電柱がない」と視認できるほど近くにいるのに、どうして彼らの乗っている車は宙に浮かないのか。といった疑問点が次々と湧いてきて、純粋に楽しめなかった。「アルマゲドン2009」が同じく理論が不明瞭ながらもストレートな災害シーンの連発でノリで押し切っていたのに対し、本作は災害対策のメインを宇宙サイドに持ってきたために地球側ばかり描写するわけにはいかず、災害シーンが途切れ途切れになってパワー不足に感じられたのも難点だ。挙句に「飛行場から無線機を盗もうとして銃を持ったオヤジに追い回される」「機密書類を盗み出したせいで軍の人間に追われる」といった、「本当に地球規模の災害を扱った映画なのか?」と疑いたくなるくらいにマイクロスケールの危機が連続し、大いにゲンナリさせられる。宇宙サイドの描写も盛り込むことで「アルマゲドン2009」の発展形を狙ったと推測されるが、その目論見が上手くいったとは到底思えない出来だった。


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