とあるアパートの一室。テリーは男女2名の知人を部屋に招き、ドクロの仮面をかぶりながら酒を飲み交わしていた。だが突如、テリーは部屋の電気を消すと、男の知人を惨殺。更に女の知人を地下室に監禁し、散々にいたぶり始めた。実はしばらく前から、テリーの脳には神の啓示が降りるようになっていた。何でもこの神は遥か昔、マグダラのマリアの命を助けたために真の力を失ったらしい。力を取り戻して現世に甦るべく、マグダラのマリアの生まれ変わりであるこの女性を処刑するよう命令を下していたのだ。言われるがまま、女性を拷問し、十字架に磔にするテリー。しかしこの声の主は、もちろん神なんかではない。アパートのオーナーであるフレッドが、テリーの部屋に仕掛けたスピーカーを通して語りかけていた。フレッドの正体は、女性を磔にすることに生きがいを見出す連続殺人鬼。麻薬中毒者のテリーを洗脳して手下にし、仕事を手伝わせていたのである…。
素人映画同然の代物を平気でリリースすることに定評のある、JVD社の「DEEP RED」レーベルの一本。本作もやっぱりと言うか何と言うか、素人映画レベルの代物だ。いや、本作の酷さは底辺揃いの「DEEP RED」レーベルの中でもかなりの下層レベルと言っても過言ではないだろう。冒頭、裸の女性が十字架にかけられている静止画が延々と映し出され、こちらの精神は即座にノックアウトされてしまう。その後、女性を地下に監禁し、いよいよ拷問開始かと思いきや、狂信者テリーと監禁された女性の不毛なやり取りがダラダラ続くばかりで、一向に展開が進まない。更に尺稼ぎとして、シーンの合間合間にはオープニング同様の十字架にかけられた裸女の映像が何度も挿入され、こちらの鑑賞意欲をこれでもかと言わんばかりに削り取っていく。やっと女性の拷問が開始されるのは、映画も中盤を過ぎたあたりだ。ここまで引っ張ったからには期待したいところだが、その肝心の拷問すらもヘナヘナな出来だったのは言うまでもない。女性を天井から吊るしてレンガを投げつける拷問なのだが、「レンガを拾う→女性が身をくねらせる→壁にたたきつけられるレンガ」といったカット割で、女性とレンガが絶対に同じ画面に映らない。女性がレンガに当たっているかどうか判別できないのに、いつの間にか女性が血まみれになっており、あまりにも釈然としない映像は欲求不満を膨張させるだけだった。そしてクライマックスの真相解明も、フレッドの長台詞によって説明してしまうお手軽仕様で、大きな驚きもなければスッキリするわけでもない。観終わった後は、強烈な徒労感に全身を支配されてしまった。