バンシー                「評価 B」

1970年。ドライブをしていた3人の若者は、出会った美女を車に乗せた。しかし彼女の実体は、人喰い怪物バンシーだった。人間の認識を操作することであらゆる外見に切り替えることができるバンシーは、車に乗るなり次々と若者たちの姿に変身。驚く彼らを殺戮したはいいが、車は道路を外れ沼地に転落。沼地の底で、長きの眠りについていた。ところが現代、沼地の清掃をしていたジャックが車を引き上げたことから、惨劇は再び幕を開けた。春休みにキャンプに出かけたヴェロニカたちは、友人の姿をしたバンシーに襲われる。必死で逃げ惑った果て、一軒の古びた家にたどり着いた。家の中にはジャックと、甥のロッカーが。既にジャックの家もバンシーに襲われており、犬や妻が奴の餌食に。そこを偶然町に来ていたロッカーに拾われ、ここまで逃げてきたというのだ。更に捜索に来た保安官ジュエルも加わり、家の中に篭城してバンシーに備える一行。しかしバンシーは僅かな隙をついて襲撃してくるので、完全に守り抜くことは不可能だった。そこでヴェロニカたちは、大きな音でバンシーの動きを封じ、その間に車で脱出するという作戦に出た…。

「カジノ・ゾンビ BET OR DEAD」のコリン・ゼイズ監督による流血系モンスター映画。バンシーは翼による飛行や杭投げや音波攻撃と多彩な能力を見せてくれるが、何より本作でピックアップされていたのは変身能力である。自分の肉体を変化させるのではなく、認識を操作して「自分をそれ以外の何かに見せる」という一風変わった能力は、めまぐるしく外見を切り替えることで襲撃シーンをスタイリッシュなものにするばかりでなく、壊れたテントを元通りに見せるなんて芸当も可能にしており、作品の大きな見所となっていた。そのくせバンシー本人に知能が足りず、擬態が露骨に不自然で相手を欺くのに失敗する展開が何度も出てくるのも愛おしく感じられる。また襲撃シーンは、頭が破裂したり高所から叩き落されたりとスプラッター描写が満載なのも嬉しいところだ。特殊効果の稚拙さとか、登場する老人の弟がバンシーに殺されたという話が全然活かされないとか、クライマックスがその前の戦闘に比べて高揚感に欠けるとか、決して欠点がないわけではないのだが、それでもなお余りある魅力を放っていた快作だ。


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