スピーシー・オブ・コブラ                「評価 B」

古来よりインドの民が敬い畏れる、豊饒の女神ナギン。蛇の姿をしたこの神は体内にナグマニという石を宿しており、それを手に入れた者は不老不死になれるらしい。そのため多くの人間がナグマニを奪い取ろうとしたが、皆失敗し、ナギンの制裁で命を落としてきた。そして現代、新たにナグマニを求める者が現れた。脳腫瘍で余命半年の大富豪ステイツだ。彼はナギンの恋人であるオスのコブラを捕獲すると、自らが所有する廃墟に幽閉し、ナギンを誘き寄せようとした。すると程なくして、町では奇怪な変死体が次々発見される。コブラ1000匹分の毒により全身が無惨に腫れ上がっていたり、酸で溶かされ髪の毛や服が混じり合った肉の塊と化していたり。グプタ警部はこの謎を追う中で、巨大な蛇を見たという証言を多数入手する。恋人を探して人里に降りてきたナギンが、美しい女性に姿を変えて町を徘徊。言い寄ってきたチンピラや女性に暴力を振るう悪漢たちを大蛇の姿で惨殺していたのだ。しかし超常現象を信じないグプタ警部は巨大ヘビの痕跡がないことから捜査を進展させられず、苦悩するばかりだった。一方でステイツは、事件の報道からナギンの到来が近いことを確信し、ナギンを無力化させる秘策の準備を着々と進めていた…。

デヴィッド・リンチの娘、ジェニファー・チェンバース・リンチ監督による印米合作のヘビ映画。ヘビから人間へ自在に姿を変えられるナギンの魅力が存分に発揮されており、ヘビ映画好きには大変眼福な内容だった。何よりナギンが、人間とヘビの中間形態を幾度も見せてくれるのが嬉しい限り。ヘビの体に人間の手足が生えた姿、脱皮してウロコ人間と化した姿、上半身が人間で下半身がヘビの姿など、単に中間形態と言えどバリエーションが豊富で、しかもどの姿もインパクト溢れるデザインをしているから素晴らしい。中でも人間を丸呑みにしたナギンが、頭と手足だけ女性の姿に変わり、膨れ上がった蛇腹をさすりながら穏やかな眠りにつく様子は、美醜の入り混じり具合が絶妙でひたすら感嘆するより他なかった。
ただクリーチャーに関しては申し分ないのに、ストーリーのテンポがあまり宜しくないのは難点だった。チンピラ2人を惨殺するところまでは良かったが、その後はグプタ警部の家族に関するドラマやステイツの陰謀劇が続き、なかなかナギンの出番が回ってこない。たまに襲撃シーンが出ても「牙をむくナギン→翌朝死体が発見される」といった具合で殺害する光景が描写されないことが多く、マトモな活躍はクライマックスにおけるステイツとの直接対決を待たなければならないのだ。警部のエピソードはナギンを単なる殺戮魔にしないための重要なファクターではあるのだが、もう少し見せ場の配分を考えて欲しいと感じた。


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