バトル・オブ・パシフィック                「評価 D」

40年の長きにわたりアメリカを守り続けてきた、巨大戦艦アイオワ。このたび退役して博物館として利用されることが決まり、韓国のインチョン港から最後の航海に出ようとしていた。だがその時、とんでもない情報が入ってくる。北朝鮮との国境付近にあるテチョン島が、国籍不明の戦艦からミサイル攻撃を受けているというのだ。艦長ウィンストンは北朝鮮か中国による攻撃と考え、応援のためテチョン島沖へと向かった。しかしそこにいたのは、米軍の技術力を遥かに超えた高性能な戦艦だった。レーダーに捕捉されないばかりか、周囲の風景に溶け込んで視認すら不可能。更に電磁パルスを放つことで周辺一帯に存在するあらゆる電子回路をショートさせるという脅威の機能までついており、最新鋭戦闘機は次々と操縦不能に陥り墜落していった。アイオワもレーダー等が使用不能に陥ったが、旧式の操縦系統を有していたため、辛うじて航行不能には至らなかった。飛んでくるミサイルを迎撃しながら、敵艦の位置を把握すると、相手の正体を見定めるべく、ボートに乗せた小隊を送り込む。ところが艦内に侵入した兵士たちが遭遇したのは、人間とはかけ離れた異形の怪物だった。この戦艦は、地球侵略に来たエイリアンたちのものだったのだ。ウィンストンはその事実に驚愕としつつ、戦艦との交戦を続ける。だが困ったことに、エイリアンの戦艦は1つだけではなかった。別の戦艦が北朝鮮本土を爆撃したことから、事態は一気に緊迫化。宇宙人の存在を信じられず、「北朝鮮・中国軍の最新鋭戦艦が韓国を爆撃した」と主張する米軍と、「米軍のでっちあげによる侵略行為が始まった」と主張する北朝鮮および中国軍が真っ向から対立。第三次世界大戦が、刻一刻と迫りつつあった。この状況を鎮めるには、電磁パルスに唯一対抗できるアイオワで敵艦を捕獲し、宇宙人の存在を白日の下に晒すしかない。かくして世界の運命は、一隻の老朽した戦艦に託された…。

「世界侵略:ロサンゼルス決戦」に肖って「バトル・オブ・ロサンゼルス」を作ったアサイラム社。今度は「バトルシップ」に肖って、こんなSF海戦映画を作ってしまった。宇宙人の戦艦が電磁パルスで最新鋭の兵器を封じ込めたので、地球の軍隊が老朽した戦艦で立ち向かうというプロットはそのまんま。ただ本作はそこに政治情勢を絡めており、宇宙人の無差別攻撃によって米中の対立が深刻化するという別の軸を盛り込んできたのには感心した。これにより「宇宙人の存在を証明できなければ、たとえ敵を倒しても最悪の事態は免れない」という状況が作り出され、「敵の退治よりも捕獲を優先する」という主人公たちの行動目的が、極めて合理的な形で成立していたのだ。大抵のモンスター映画では捕獲が優先される場合、「研究対象にするから」といった身勝手な理由しか設定されず、観客を不快にさせるばかりだ。本作はきちんとそうせざるを得ない理由を説明することで反感を回避しており、純粋に緊張感を盛り上げる効果だけを発揮していた。
しかしこれだけ上手くシチュエーションを組み立てたというのに、終盤の展開が単なる力技で、それまでの積み重ねが無惨に崩されたのは残念でならなかった。「如何にして相手を捕獲するか」という方向に興味を動かしておきながら、あの強引なクライマックスは無いだろう。せっかく低予算映画ながら光るものが見れると思ったのに、結局は最後で落胆させられる作品だった。


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