山間にひっそりと存在する小さな村。ここで鍛冶屋を営むフランシスのもとに、久方ぶりに兄アレックが帰ってきた。しかし再会を喜ぶのも束の間、満身創痍で憔悴しきった男・シドが村に現れ、とんでもないことを語り出した。何でも彼は村の近くの谷を通る際、ヘビのような外見の巨大な怪鳥に襲われたらしい。話を聞いた村の面々は、その怪鳥が村の伝承に出てくる伝説のドラゴン、ジャバウォックに違いないと確信した。かつてローマ軍によって討伐されたはずのジャバウォック。だが谷底には孵化していない卵が残っており、雷雨と共に新たなる個体として誕生したのだ。やがてジャバウォックは幾重にもわたり村を襲い始め、多くの住民たちを虐殺していく。フランシスとアレックはジャバウォックを巨大な檻に閉じ込めて身動きを封じようとしたが、敢え無く失敗。檻は破壊され、アレックが命を落とすという、悲惨な結果を招いてしまった。それでも希望を絶やさなかったフランシスは、自ら作り上げた長剣“雷斬りの剣”を携えると、シドの案内のもと、ジャバウォックの巣へと足を踏み入れた…。
「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」のスティーヴン・R・モンロー監督による竜退治映画。ジャバウォックは全体的なシルエットこそ正統派ワイバーンといった具合だが、扁平な頭頂部や縦に裂けた下顎など、細部に凝らした個性がかえって全体のバランスを崩しており、妙に不細工に感じられるのが玉にキズだ。しかし本作には、そんなことが些細な点に思えるほどの重大な欠点が存在した。それは戦闘シーンのつまらなさである。本当にこの映画、戦闘の撮り方にセンスの欠片も感じられなかった。剣を振るう人間と攻撃を受けるジャバウォックが同じ画面に映ることは滅多になく、臨場感がこれっぽっちもないのは朝飯前。ジャバウォックが人間を掴み上げて飛行する、本来なら恐怖感を煽るシーンですら、遠方からのワンショットで捉えるばかりなので間抜けな空気を漂わせる。こんな腑抜けた撮り方はクライマックスのジャバウォックとの決闘においても同様で、あまりにも呆気なく終了する対決には観ていて脱力するばかりだ。同じ監督の同じ飛行モンスター映画でも、ワイバーンの頭の良さが魅力的な「ジュラシック・プレデター」の方が遥かに楽しめる出来だった。