ポランコ教授が消息を絶ってから、半年が過ぎた。教え子のジャックたちは彼の行方を突き止めるため、テキサスの農場に構えられた研究所を訪れる。そこは一見何の変哲もない民家だったが、重大な秘密が隠されていた。部屋のクローゼットの向こう側に、すさまじく巨大な異次元の洞窟が広がっていたのだ。どうやら教授はこの異空間を調査している最中に、何らかのトラブルによって姿を消したらしい。そこでジャックたちは、教授の研究を継ぐため、そしてこの大発見を自分たちの功績にするため、勇んで洞窟内の探検に躍り出た。一切の光がない暗黒の迷路を、一行は体に巻きつけたライトを頼りに進んでいく。だがそんな彼らの様子を、闇の奥で窺う連中がいた。人間の肉体を乗っ取り、地球への進出を企てる凶悪なエイリアンたちが…。
クローゼットの向こうがモンスターの跋扈する異世界という、「ナルニア国物語」「モンスター・イン・ザ・クローゼット 暗闇の悪魔」を彷彿とさせるコンセプトの洞窟探検映画。映画の大半は異次元の洞窟内で進行するわけだが、この中の映像が本当に何が何だか分からない状態で困った。主人公たちの持っているライト以外に明かりが全くない上、出てくるカットは登場人物のアップばかりで、彼らの状況がまるで把握できない。気づいたら崖らしい場所を登っていて、気づいたら1名が転落して骨折していて、気づいたらエイリアンに襲われていて──といった感じが延々と続くのだ。制作側はPOVの雰囲気を取り入れようとしたのかもしれないが、POVの臨場感が成り立つのは登場人物と観客の認識が一致してこそだ。本作の場合、観ている人間が戸惑っているのを余所に、登場人物たちはちゃんと自分たちの状況を把握しているものだから、認識が乖離すること甚だしく、ひたすらに混乱を誘うばかりだった。
しかし一方で、モンスター映画としては低予算ながらも頑張っている印象だった。エイリアン本体は平凡な触手モンスターといった風情だが、エイリアンに肉体を乗っ取られた人間は、下半身に無数の口ができていたり、乳房や腹が裂けて内側の別の皮膚を覗かせていたり、頭が縦に割れて大量の触手が溢れ出したり、とツボを押さえた異形ぶりで楽しませてくれる。しかもモンスターたちの出番になった途端、それまで暗すぎた画面が突然仄かに明るくなり、しっかり奴らのおぞましい御姿を拝見できるという粋な計らい。モンスターが本格的に活動する後半部分に限って言えば、制作側の拘りをひしひしと感じさせる、良作と呼べる出来だった。