サラたち家族は、町の片隅で小さなお菓子屋を営んでいた。ところが2年前、イカれた殺人鬼ミラードによって父親と兄が殺害される。辛うじて生き永らえたサラは、母親リーと共に懸命に店を切り盛りしてきた。そして現在、ミラードの死刑が執行されたとのニュースが飛び込み、彼女はようやく暗い過去から解放されるかに思われた。ところがそんなある日、怪しい女性からジンジャーブレッド用の粉が送り届けられた。サラはその粉を使って生地を練り、人の形にしてオーブンに入れ、大きなジンジャーブレッドを焼きあげる。しかしこの粉には、重大な秘密があった。先ほど粉を届けに来た女性はミラードの母親で、粉には処刑されたミラードの遺灰が混ぜ込んであった。更に生地を作る直前、腕を切った従業員の血が粉に落ちていた。ミラードの遺灰が生き血を吸い、新たな生命を獲得する。かくして前代未聞のジンジャーブレッドの殺人鬼・ジンジャーデッドマンが誕生したのだ。ジンジャーデッドマンはオーブンから抜け出すと、調理場に置いてあったナイフやロープを駆使して次々と人間を血祭りにあげていく。サラは自らの過去に決着をつけるべく、友人アモスと共にジンジャーデッドマンに立ち向かう…。
チャールズ・バンド。有名な「パペット・マスター」シリーズをはじめ、「ホムンクルス 新種誕生」「ミニサイズ 縮んだやつら」など、ゲロゲロでゴキゲンなモンスターを数多く生み出してきた彼が、2005年に新たなモンスターを世に送り出した。それが本作の主人公、ジンジャーデッドマンだ。体は可愛らしい人型クッキーなのに、顔は渋いオッサン風というギャップがインパクト抜群。他のチャールズ・バンド作品と同様、特殊効果は安っぽさ全開だし、ストーリーも腑抜けた感じが漂うが、このチープさがジンジャーデッドマンのアンバランスな造形と絶妙にマッチし、不気味な一体感を醸し出す。いかにも彼の作品らしい、駄菓子のような味わいが癖になる怪作だった。
しかしこの映画、ジンジャーデッドマンがあまりにも神出鬼没すぎて、その魅力を存分に引き出せているとは言えなかった。何よりも襲撃方法が凡庸なのがいただけない。映画中盤で人間の全身にクリームを塗って冷凍庫に押し込み、人間ケーキに仕立てたのは目を引いたが、その後は特に珍しい手口を披露することもないまま、割とアッサリ倒されてしまい拍子抜け。まだまだシリーズは続くようなので、今後の活躍に期待したいところだ。