2020年。国際宇宙調査隊は金星に生命体がいるか調査するため、シリウス、ベガ、カペラの3体の有人ロケットを向かわせた。しかし金星到達間際になって、カペラが隕石に衝突して爆散するアクシデントが発生。思わぬ事態に及び腰になった本部は、残る2体のロケットに対し、金星軌道上での待機を命じることにした。それが面白くないのが、ロックハート隊長をはじめとするベガの乗組員たち。彼らは折角ここまで来たのに金星に着陸できなかったらたまらんと、ロボットのジョンと共に、独断で金星に降り立った。だが間もなく、彼らとの通信は途絶えてしまう。もしや彼らの身に、何か異変が起こったのでは。そこでシリウスの乗組員たちは、消息を絶ったベガの乗組員たちを捜索・救助するべく、追って金星に着陸。するとそこには、凶暴な恐竜たちが跋扈し、火山から絶えず溶岩が溢れ出る、あまりにも過酷な世界が広がっていた…。
宇宙探検なのにタイムトラベル物の雰囲気が濃厚な、ソビエトの異色SF映画「火を噴く惑星」。それをロジャー・コーマンがアメリカ公開用に大胆に編集し、完全に別物の映画に仕立て上げてしまったのが本作だ。
ロジャー・コーマンの手がかかっているものだから、「生命は何処から来たのか?」という哲学的な要素は当然カット。登場人物たちは目の前のトラブルにあたふたしながら軽口を叩き合うばかりで、ストーリーの重みなんてものは殆どない。そこにジャンピングトカゲや人喰い植物との戦いなど、画的に見栄えのする箇所をピックアップして繋ぎ合わせることで、あの奇妙なムードが嘘のように削り取られ、明瞭な娯楽作品へと作り変えられていた。文明の象徴となる石像や、女性の声など、「火を噴く惑星」で重要な要素となる諸々のものが、完全に小道具的な扱いを受けており衝撃的。
娯楽作になったことで独自性が薄れ、数多の宇宙探検映画の中に埋没してしまった感は否めない。でもオリジナルで腰を折る要因でしかなかったジャンピングトカゲが、本作のライトな雰囲気にマッチして俄然輝きを放っていたのは見逃せない。これはこれで味わい深いものがあった。