ミュータント 人類改造計画(別題:ミュータント・ゾンビ・オブ・ザ・デッド)「評価 B」

アメリカ南部の田舎道を、一台の車が走っていた。ジョシュが失恋した弟マイクを励ますため、ドライブに連れ出したのだ。しかし目隠し運転なんて無茶なことをするものだから、荒くれどもの車とニアミス。怒った荒くれどもはUターンして追いかけてきて、ジョシュの車を川に突き落としてしまう。これではもう、ドライブどころではない。ジョシュとマイクは車を修理してもらうべく、徒歩で近くの町に行くことにした。夜も更けた頃、2人は小さな町グッドランドに辿り着く。ところがこの町、どうも様子が変だ。いくら田舎とはいえ盛り場があり、夜はそれなりに賑わっていそうなのに、通行人が殆ど見当たらず、ゴーストタウンも同然の有様だった。そんな中、立ち寄った酒場で先ほどの荒くれどもと一悶着ありながら、町の保安官スチュアートに出会った2人は、彼の紹介で一軒の家に泊めてもらうことにした。ジョシュは荒くれだらけのこの町が気に入らず、翌朝になったらすぐに町を離れることを心に決めた。だが次の朝、マイクは部屋に荷物を残し、忽然と姿を消していた。ジョシュは外に出て、知り合った女教師ホリーと共に弟を探す。町は昨晩以上に人間の気配が少なくなっており、不穏な空気が漂う。そして遂に、ジョシュは事の真相を目の当たりにする。化学工場の廃液で醜悪なゾンビに突然変異した住民たちが、変化していない人間を襲い、生き血を啜っていたのだ…。

「巨大クモ軍団の襲撃」のジョン・“バッド”・カードス監督によるゾンビ映画。人間がゾンビに変異する際の、皮膚が膨張し、掌が裂けて黄色い廃液が流れ出すメイクは良く出来ている。廃液が猛毒で、車の窓ガラスを溶かして手を突っ込んでくるので、たとえ車の中にいても安心はできない──という緊張感を生み出していたのも、なかなかのアイディアだ。クライマックスにおける無数のゾンビが迫り来る光景も見栄えがするし、ことゾンビの描写に関しては文句の付け所がない作品だった。
一方でこの映画、全ての元凶である化学工場との対決が、中盤のごくごく軽いシークエンスで流されていたのは残念なところ。対決後は、マイクとの悲劇的な再会、そしてゾンビ包囲網からの脱出と続くわけだが、化学工場での騒動が終わった時点で主人公ジョシュにできることは終了しているため、先の展開への求心性を著しく欠いていたのだ。そのため終盤の大襲来も、映像的には素晴らしいのにストーリー面での盛り上がりは乏しく、どうにもアンバランスに感じられた。佳作ではあるのだが、あと一押し足りない作品だった。


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