巨大クモ軍団の襲撃        「評価 B」

雄大な自然を有する田舎町、ヴェルデ・バレー。品評会を間近に控えたこの町で、家畜の牛が原因不明の病で死亡する事件が発生した。獣医のラックが見ても死因は特定できなかったので、彼は動物病理学研究所に協力を要請。すると後日、研究所のダイアンがもってきた報告は驚くべきものだった。死亡した牛からは、タランチュラの毒、それも通常より遥かに強力なものが検出されたらしい。ラックが牧場主にそのことを伝えると、最近牧場近くに巨大なクモ山ができたという話ではないか。突然変異で凶悪な毒をもつようになったタランチュラが、ヴェルデ・バレーを根城に増殖していたのである。早速クモ山は焼き払われ、事態は解決したかに思われた。ところが運よく難を逃れたタランチュラたちが、町中至るところで増殖を開始。瞬く間にヴェルデ・バレーの町はタランチュラで溢れかえり、最早人間の手には負えない状況になってしまった…。

モノホンのタランチュラたちが人間様にわらわら群がる、クモ映画界の「スクワーム」「人蛇大戦 蛇」「ラッツ」といった風情の役者魂炸裂ムービー。タランチュラが何十何百という単位で画面を埋め尽くし、役者たちの体の上をゾロゾロ歩き回る光景は、身も凍るほどのインパクトがあった。更に本作では、僅かな隙を突いて獲物に這いよる神出鬼没さが殊更に強調される。少し車のドアを開けて放置しようものなら、たちまち車内はタランチュラだらけに。たとえその場で除去したと思っても、完全に除去できたかは誰の目にも分からないものだから、走行中の車や飛行機でも決して油断できず、作品に緊張感をもたらしていた。
一方でこの手のキワモノ映画の例に漏れず、ストーリーは有って無きがごとしだ。ひたすらにクモの大群と、役者の頑張る姿を眺めることに特化した内容であり、それだけでも十分すぎるほど面白いのだが、さすがに終盤近くにもなると、進展の見えないストーリーにヤキモキしてくる。するとそこに、タランチュラに負けないくらいの衝撃に満ちたラストが舞い込んでくるからたまったものじゃない。それまで映画に付き合ってきた人間をあざ笑うかのような、あまりにも壮絶なオチには爆笑必至。キワモノ映画のツボを心得ている、実にナイスな作品だった。


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