メキシコ湾、マイアミ沖。ホルター社の油田掘削基地が、溶岩を掘り当てて壊滅した。この地点をはじめ、メキシコ湾各地の海底には莫大な石油が埋蔵されているが、そのすぐ下層には巨大な溶岩ドームが広がっていた。そんな場所での採掘は、薄氷を歩くがごとき行為だったのだ。しかしホルター石油の重役たちはそのことを承知で石油を掘り続け、巨万の富を得ていた。彼らは今回の事故にも動じることはなく、すぐに新しい掘削基地を用意し、採掘を再開しようとした。ところがそんな無理な行為が繰り返された結果、最悪の事態が発生した。メキシコ湾の海底に存在する、巨大な火山が活動を開始。蒸気が、地割れが、マグマが、マイアミの住民たちに牙を剥いた。このままではマイアミの中心部で大噴火が発生し、大勢の死者が出る危険がある。火山学者のアントワネットは独自の調査により、これらの原因がホルター社にあることを突き止める。更に事態を打開するべく、液体窒素を使って溶岩の噴出地点と流れを調節し、運河に流し込むことで、被害を最小限に抑える計画を立案。早速実行に移さんとするが、事実の公表を恐れたホルター社の指示により、工作員が作業現場を暗躍。アントワネットの妹エミリーが誘拐され、思わぬ窮地に立たされてしまった…。
「TATSUMAKI」のトドール・チャプカノフ監督による火山パニック映画。後半になると主人公たちが災害の最前線におらず、災害の場面がめっきり減ってしまう欠点は「TATSUMAKI」と何ら変わりない。それどころか本作は「TATSUMAKI」には存在していた、「主人公の代わりに最前線で災害を体験してくれる人間」すらいなかった。後半はホルター社の陰謀劇でお茶を濁されており、火山噴火の問題は完全に蚊帳の外。パニック映画好きとしては欲求不満が溜まってしょうがなかった。
それでも評価がDでないのは、前半の災害描写に光るものを感じたからだ。メインとなる溶岩の他にも、海水が沸騰してボートに乗っていた人間が転落したり、超高温の蒸気で水着ギャルたちの皮膚が爛れたり、採掘装置が破裂して近くにいた人間が無惨な死を遂げたりと、バリエーションが豊富で飽きさせない。そして溶岩を使った災害シーンも、テニスプレイ中にコートが割れて溶岩が吹き上がり、溶岩をまとったボールが飛んできてラケットを溶かし体を貫通する、なんてウルトラCクラスの変化球が出てきて楽しませてくれた。これで終盤さえ失敗しなければ文句はないのに、何とも残念な作品だ。