何もない草原に、無数の反射板が設置されている。政府の情報機関に勤めるジョンは、その実態把握のため、反射板を設置した老人に会いにいった。ところが彼に質問をした矢先、空から複数の小型隕石が襲来。その1つが老人の胸を貫通し、地中深くに沈んでいった。これで聞き取りができなくなったので、ジョンは科学捜査本部に協力を要請。駆けつけた捜査員クロエが現場を調査すると、程なくして事件は起こった。隕石の落下した穴から、火柱が天高く上がる。するとそれに呼応するかのように、世界各地で異常気象が発生。ある場所では太陽フレアによる炎が地表を焼き払い、またある場所では暴風雨が巻き起こる。更に地球の自転速度が下がり始め、このままでは24時間以内に地球は完全に静止し、太陽に向かう面は焦土に、太陽から隠れた面は凍土に変わり、地球の殆どの生命が死滅してしまうことが明らかに。クロエはこれらの異常現象の原因を調べた結果、例の隕石に行き当たった。あの隕石は超密度星間物質で構成されており、地中深くに沈んだ果て、地球を貫通した。それにより地球の磁場が大きく乱れ、自転にブレーキがかかったのだ。この事態を解決するには、20年前にロスマン博士が作り出したという共鳴装置で人工衛星を操作し、磁場を元通りに修復するしかない。そこでジョンとクロエは、ロスマン博士が収容されている精神病院に向かう。だがそこは、CIAエージェントたちによる厳重な警備下に置かれていた。実はCIAのアーネット長官こそが、この異常現象を引き起こした黒幕だった。彼はロスマン博士の共同研究者グディエレス博士に、反射板を使って超密度星間物質を呼び寄せてもらう。そして共鳴装置を操作し、地表のごく一部のみを安全地帯にすることで、選ばれし人間だけが暮らす新世界を作り出そうとしていたのだ…。
究極の見掛け倒し怪獣映画「モンスター・マウンテン」のW・D・ホーガン監督による、これまた設定上のスケールだけは壮大なSFパニック映画。地球規模の災害が起こっているはずなのに、都市破壊は一切拝めず、ひたすら山の中での災害シーンが連続する。上空に炎の円環が出現し、鞭のごとくうねりながら地表を超高熱で焼いて切断していく描写は、「モンスター・マウンテン」のビヒモス同様に並々ならぬ格好よさがあった。しかしこの炎、あまりに強力すぎて合理的な回避方法が示されないものだから、主人公たちは適当に走っているだけで回避できるけれど、敵役の連中はこれでもかという位に炎に当たって死んでいく──というご都合主義万歳な場面が幾度となく出てきて、とにかく鼻についた。
肝心の災害描写がこれでは、当然脚本の質も望めまい。脚本面ではCIAの無能さが際立っていた。特に噴飯モノだったのが、精神病院からロスマンを連れ出したジョンとクロエを追跡するシーン。彼らの野望達成には共鳴装置が必要であり、その場所を知っているロスマン博士は必ず生け捕りにしなければならない。なのにCIAの奴らときたら、手当たり次第に撃ちまくる。それで案の定ロスマンに銃弾が当たって死なせてしまうのだから、全く脳味噌筋肉もいいところだ。後先考えずに行動することの愚かしさを教えてくれる、とても教訓的な珍場面である。