北海に浮かぶ石油採掘基地で、事故が発生。突如海底が割れ、溢れ出してきたアメーバ状の未知なる生命体が海中の鉄骨を浸食。基地は激しく揺れ、働いていた作業員が重傷を負った。それから数時間後、ドイツ本土では謎の伝染病が蔓延し、人々がパニックに陥っていた。女医エヴァは感染者たちの対応に追われる中、彼らが海水と接触していたことを突き止め、市に対して海への立入を禁じるように請願した。市は夏の観光シーズンということもあり、海岸を封鎖することに眉をひそめる。だが原因調査のため派遣されてきた連邦環境省のペーターがエヴァの意見に賛同すると、渋々ながらも海への立ち入りを禁じる声明を出した。しかし発令が広まる直前に、ボートで海に出ていた親子がいた。ベルントとリザ。エヴァが離婚した夫と、その娘だ。程なくしてベルントは、全身を未知なる生命体に蝕まれ、無惨な有様で病院に運び込まれる。エヴァは彼の口からリザも一緒に海に出ていたことを知るが、リザは海中で姿を消し、未だ発見されていなかった。やがてベルントは絶命し、リザの捜索も打ち切られる。絶望に沈むエヴァ。一方ペーターは、海洋生物学者フィンを招いて、伝染病を引き起こしている未知なる生命体について調べさせていた。その結果、生命体が石油バクテリアを栄養源としていることが判明する。ちょうど石油採掘基地で事故が発生したばかり。そこでペーターとフィン、そして娘の命を諦めきれないエヴァは、生命体の本拠地と思われる石油採掘基地へ向かった。彼らは潜水艇に乗り込み、海底の裂け目へと突入する。そこには巨大なクラゲのような姿の生命体が。更に死んだと思われていたリザが、繭の形状をとった生命体に包まれて海中を漂っていた…。
「オープン・ウォーター2」のハンス・ホルン監督による海洋SF映画。ありふれたウイルスパニックかと思わせておいて、その原因が猛スピードで進化する未知なる生命体と判明し、やがて深海での壮大な邂逅に発展していく流れは美しかった。最後まで生命体とはまともなコンタクトがとれず、何故殺す人間と生かす人間を選別しているのか? そもそも生かす目的は? といった疑問には一切答えが提示されないのが腰砕けだが、神秘性重視ということでまあ納得はいく。
だがこの映画、大企業の陰謀要素は不要に感じられた。生命体関連だけでストーリーは完成しているし、十分な山場も作れている。なのに何が悲しくて、石油採掘基地を売り飛ばすために不穏な情報を隠蔽しようとする──という、セコいにも程がある話を見なければならないのか。上層陣が裁かれずに終わって後味が悪いこと限りないし、どうしてこんなサイドストーリーを盛り込んだのか理解に苦しんだ。