フィアー・フロム・デプス        「評価 C」

寂れた漁港にて、漁師たちが次々と姿を消す事件が発生。村人たちは彼らが海に落ちて溺死したと考えていたが、漁の最中に部下の船員を失ったウィルは、彼が消える寸前、その近くに透明で巨大な何者かが蠢いていたのを目撃していた。この海に、得体の知れない怪物がいる。ウィルは村の漁師たちにそのことを訴えるが、誰も信じてはくれなかった。とそんな時、ウィルは近辺の浜辺を調査中の海洋生物学者アーデンと知り合う。彼女の話によると、何らかの毒液を吐く生物が出てきて、海の生態系が狂いつつあるらしい。ウィルは彼女と共に、謎の生物の捜索を始める。一方、ウィルの娘カーリーは恋人と共に、近くの無人島へデートに出かけていた。ところが不運なことに、そこは地獄の一丁目。毒液を吐き、姿を消すことのできる人喰い半魚人が、大量に棲息していたのである。カーリーたちは必死に抵抗しながら、半魚人から逃げ回る。そのころ港では、飲んだくれ漁師のベンが半魚人に殺された。しかしベンは死の間際、発信機つきの槍を半魚人に刺していた。ウィルとアーデンはその信号を頼りに、無人島へと向かう…。

「スネークヘッドテラー」「ジュラシック・レイク」のポール・ジラー監督による海洋モンスターパニック。半魚人が大挙して出演するが、その容姿について登場人物たちは口々に「アンコウみたい」と言及する。でもその姿は、でかい背びれはともかくとして、巨大な眼球といいスレンダーな体型といい、アンコウには程遠い。むしろ周囲の風景に擬態する能力や、やたら長い舌で獲物に巻きつく様子なんかを見るに、物凄くカメレオンに似ているのだ。海に住んでいる半魚人のくせに、だ。ひょっとして他の映画で使う予定だったクリーチャーを流用したのでは──という疑念が湧いてくるが、真相は闇の中だ。
それはともかくとして、この半魚人の暴れる様はスプラッター満載に描かれていて楽しめた。姿を消して獲物に接近し、毒液で動きを封じ、鋭い牙で食らいつく、と手順を踏んだ狩りの描写もスマートな感じで、なかなか魅力的。ところが映画が終盤に差し掛かると、異変が訪れる。それまで半魚人を強敵たらしめていた毒液や透明化といった凶悪性能が、さっぱり使われなくなるのだ。代わりにやることと言えば、長い舌で獲物を絡めとって食らうという、以前と比べれば格段に地味な攻撃ばかり。確かに前半のような戦い方で翻弄してきては到底勝ち目がないのは分かるが、何もそこまで露骨に弱体化させなくても。急激な盛り下がり具合に、落胆を禁じえない作品だった。


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